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【独自】コロナ感染遺体司法解剖、5割超「受け入れられない」
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、日本法医学会と日本法医病理学会が先月行った調査で、司法解剖を手がける73機関のうち5割超の40機関が、感染した遺体について「受け入れられない」と回答したことが両学会への取材でわかった。感染防止設備の不備を訴える機関が多く、ウイルスが死因究明の障壁になっている実態が明らかになった。
学会調査 設備、物資不十分
国立感染症研究所は今年2月、感染した遺体を解剖する際の指針を示した。解剖室は気密性を保つため、気圧を低くする「陰圧」とし、天井から床に空気が流れて排気する空調を推奨。排気口が、人の多い場所から離れていることなどにも留意するよう求めている。
今回の調査は、国内の法医学者の多くが所属する両学会がアンケート形式で行い、全国90機関のうち73機関(大学と監察医務院)が回答した。大半の機関が犯罪に巻き込まれた疑いが濃厚な遺体の司法解剖などを実施している。
感染した遺体を受け入れられないとした40機関のうち27機関は、解剖室を陰圧にしたり、十分に換気したりする設備が整っていないことを挙げた。
「(高性能の)N95マスクがない」(北海道の大学)や、「防護服を入手できない」(関西地方の大学)など、医療物資の不足を指摘する声も相次いだ。
一方、「受け入れができる」と回答した24機関の中にも、「(解剖に立ち会う)検察、警察関係者への感染の恐れを除去することはできない」など、感染を懸念する回答が複数あった。
日本法医学会の青木康博理事長(名古屋市立大教授)は、実際、関西地方の機関が警察から感染者の解剖を求められた際に断ったケースがあると説明。「死因究明の地域差を広げないため、感染防御策を充実させる必要がある。国による支援も必要だ」と語った。