アラサー目前! 自閉症の息子と父の備忘録 梅崎正直
医療・健康・介護のコラム
苦節10年 やっと背中に触れた!…愛犬がくれた「奇跡より大きなもの」
その犬を飼い始めたのは、洋介が4歳の頃だった。動物と関わることで刺激になったり、リラックスできたりと、言葉や対人関係の発達にいい影響があるのではないか。そんな期待もあった。
1998年の春、わが家の一員となったのは、両手の上に乗るくらい小さなウェルシュ・コーギーで、耳はまだ垂れていた。初日からおなか丸出しで豪快に寝ていた。女の子だったので「もも」と名付けた。
保護者のように
大喜びで、すぐに仲良しになったのは、弟の方だった。洋介は警戒して、なかなか触ることができなかった。興味はあるのだが、手を出しては引っ込める、の繰り返し。
洋介93年、次男95年、ももは97年生まれだったが、犬は生後1年で、人の「18歳」程度まで成長するというから、あっという間に立場は逆転した。散歩に行っても、子どもがちょっとでも離れると、ももが追いかける。とくに厳しくマークしていたのは洋介で、突然走り出そうものなら、激しく追走し、靴のかかとをかんで止めようとした。二人がてんでに離れていったときの慌てぶりは大変なもの。まるで、自分が保護者だと思っているようで、いつもハラハラ、大忙しなのだった(何かの習性だろうか?)。妻に「あんたの散歩なんだから、好きに歩いていいのよ」などと慰められていたくらいである。
しかし、洋介の方は、何年たっても、ももに触れずにいた。
スポンジのように
僕ら夫婦にとっても、今思えば、ももの存在は大きかった。通常とは少し違う子育ての不安やストレスが家の中に充満してしまった時も、そこに夫婦以外の存在がいてくれるだけで、感情が正面からぶつかることがなかった。それに、ちょっと手がかかる兄のために、とかく後回しにされがちだった次男にとっても、特別な存在だったようだ。寂しくなると抱きついたり、そのまま並んで眠っていたり……。家族の心からどうしようもなくあふれてくるものを、スポンジのように吸い取ってくれたのだった。
しかし、ウェルシュ・コーギーの寿命は十数年。かかりつけの獣医さんが「15歳のコーギーはあまり見たことがない」と言ったとおり、14歳になると歩けなくなった。尿が出なくなり、動物病院に入院したが、最後は自宅へ連れ帰った。点滴を付けたまま、いつも寝そべっていた窓際の位置で荒い息をしていた。
そして3日目の朝、僕の携帯電話が激しく振動したので、寝床を抜け出して画面を見たが、着信はなかった。もものところに行ってみると、まだ温かかったが、息をしていなかった。耳をピンと立てて、誰かを探すようなふうに見えた。着信の形跡がないのに携帯が鳴ったのは事実だけれど、何か不思議なことが起きたとは思っていないし、さして重要なことでもない。
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いつもありがとうございます。 コーギーは牧畜犬としての適性があるため、対象が牛や羊でなくとも、散らばり行く者々を「自分が何とかせねば!」と思う性...
いつもありがとうございます。
コーギーは牧畜犬としての適性があるため、対象が牛や羊でなくとも、散らばり行く者々を「自分が何とかせねば!」と思う性質があるようです。
下記、友人から聞いた話です。
その日はたまたま人気の無いフェリー乗り場にて、長年飼っているコーギーのリードを外し散歩させていたそうです。そのうち少し離れた所に船が着き、幾人もの人が一斉に下船してきたとのこと。
そのコーギーは突如飛ぶような猛ダッシュを見せ、下船した人の周りをぐるぐる回り、吠え立て、魂に刻まれた「仕事」をし出したとのこと。
普段は公園で散歩しているとのことで、その友人も初めて見た飼い犬の勇姿だったそうです(笑)
下船して来た人達は、勿論「なーにごとだぁ~」とびっくりですよね(汗)
御兄弟が別々の方向に走り、ももが慌ててしまったのはその性質故かなと
微笑ましく思い、コメントさせて頂きました。
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