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妊娠・育児・性の悩み

少子化大綱に「不妊治療支援」が明記、議員連盟も設立!

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 5月29日に閣議決定された「 少子化社会対策大綱 」に、「不妊」や「不妊治療」の文字が掲載され、メディアに大きく取り上げられました。言葉として明記されているのは下記のとおりです(以下、「施策の具体的内容」より)。

 P19.「妊娠や家庭・家族の役割に関する教育・啓発普及」
 P23.「不妊専門相談センターの整備」、「不妊治療に係る経済的負担の軽減等、」「不妊治療と仕事の両立のための職場環境の整備」

当事者間でも多くの反響

少子化大綱に「不妊治療支援」が明記、議員連盟も設立!

 パブリックコメントにも不妊治療についてのサポートを求める多くの声が届いたとされ、この度、初めて「医療保険の適用」という言葉も明記されたこともあり、ニュースでも大きく取り上げられたので、ご存じの方もいらっしゃるかもしれません。当事者の中でも多くの反響を呼んでいます。

 当事者の中には「いくら大綱に上がったからといっても、具体的な政策が出ないうちは、ぬか喜びはできない」と慎重な姿勢の方もいますが、今後の展開に大いに期待している方が大半のように思います。

 IT業界に勤めるKさんも、その一人です。現在33歳。26歳の時に職場結婚をして、29歳で不妊治療を開始しました。不妊治療の苦労が多々ある中でも、特に困ったのはこの五つだといいます。

  「病院選び」 …どの病院がいい(妊娠できる)のかわからない、口コミが少ない、周りで聞ける人が少ない、施術ごとの料金が不明瞭であったこと

  「経済的負担」 …共働きだと助成金上限の所得730万円は超える夫婦も多いはず。補助金が出ない中で毎回、高額支払いを続けることの経済的負担が大きく、子供を持つ夢への負担になったこと

  「仕事との両立」 …通院日が前日に決まることもザラなので、会議の関係者調整が大変だったり、頻繁な勤怠連絡で自分の心配をされるのが嫌だったこと

  「投薬の管理」 …点鼻薬、自己注射、飲み薬など時間をきっちり守らないといけない投薬が多く、管理が面倒だったこと

  「情報取得」 …病院での診察時間がとても短く、治療について詳しく聞くことが難しかったため、不妊治療の情報収集のほとんどをインターネットに頼った。そのなかで、信頼できると思う情報を自分でみつけて、自分の状態や有効な解決策、そもそもの不妊・妊娠の理解などを自らでやる必要があったのが大変だったこと。

 いずれの悩みも、不妊治療をしていると、ほぼ必ずと言っていいほどぶつかる壁だと言えるでしょう。加えて、周囲の人間関係もギクシャクしてきてしまうのが、不妊治療の大きな悩みの一つでもあります。たとえば子供がいる友人、妊娠した友人などと話すのがつらく、距離を置いてしまうというケースもよくありますし、夫婦関係に亀裂が入ることも珍しくありません。Kさんも、不妊治療に対する温度差が原因で夫婦関係が悪化し、途中、別居・離婚直前にまで至ったとのことです。

 Kさんは今回の少子化大綱に対して、「私が自身の体験を通じて持った思いは、不妊治療はつらい、できるだけこのつらさを体験する人を減らしたいというもの。ただ、それは単に不妊治療に対する啓蒙、知識提供だけでは実現できないと思うんです。だから、この大綱がいかに自分事として国民に捉えてもらえるかを追求した施策を実現してほしい。みんなが『自分事』になることで圧倒的に成果が変わると思っています」と望みを託しています。

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松本 亜樹子(まつもと・あきこ)
NPO法人Fineファウンダー・理事/国際コーチング連盟マスター認定コーチ

松本亜樹子(まつもと あきこ)

 長崎市生まれ。不妊経験をきっかけとしてNPO法人Fine(~現在・過去・未来の不妊体験者を支援する会~)を立ち上げ、不妊の環境向上等の自助活動を行なっている。自身は法人の事業に従事しながら、人材育成トレーナー(米国Gallup社認定ストレングス・コーチ、アンガーマネジメントコンサルタント等)、研修講師として活動している。著書に『不妊治療のやめどき』(WAVE出版)など。
Official site:http://coacham.biz/

野曽原 誉枝(のそはら・やすえ)
NPO法人Fine理事長

 福島県郡山市出身。NECに管理職として勤務しながら6年の不妊治療を経て男児を出産。2013年からNPO法人Fineに参画。14年9月に同法人理事、22年9月に理事長に就任。自らの不妊治療と仕事の両立の実体験をもとに、企業の従業員向け講演や、自治体向けの啓発活動、プレコンセプションケア推進に力を入れている。自身は、法人の事業に従事しながら、産後ドゥーラとして産後ケア活動をしている。

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