ピック病(認知症)介護『父と私の事件簿』
介護・シニア
[コロナ編]緊急事態宣言下に「歯が取れた!」…幻の歯科医院を目指す父 日に3度、治療室を訪ねた入れ歯騒動
「これから1時間半ぐらい、大事な仕事の電話をしているから、ドアをあけないで」
緊急事態宣言下のある日の午後のこと。むだだと思いつつ何度も父に言い聞かせ、部屋でリモート取材をしていると、案の定、扉が開いて父が顔を出す。中座できない相手の取材中だったし、急な父の音声出演など絶対困る。
幻の歯科医院を目指して「行ってくる」
両手と表情で、「今は無理、あっちに行ってて」と全力でジェスチャーすると、いったんあきらめてくれたが、10分ほどたってまたやってきた。本当に、在宅リモート取材はスリルとサスペンスに満ちている。ちょうど取材が終わったので、用件を聞くと、「入れ歯をかけている歯が取れたので、ちょっと歯医者に行ってくる」。
そう軽く言って、一人で外出しようとするではないか。ちょっと待った! もう一人で外出はしないことになっている上、確か父は以前、車で歯科に通院していたはず。歩いて行ける場所ではない。
私がそう言うと、父は、「通っていた歯科は家の近くの大通りにある」と言い張る。しかし、その場所に歯科医院があったことは、ここに住んで以来一度もない。あまりにも言い張るので医院名を聞くと、しばらく考えて「わからない」と言う。危なかった。もし一人で出ていたら、場所も名前もわからない、幻の歯科医院を求めて、行方不明案件になるところであった。
先生は「けっこうえらいことに…」
緊急事態宣言中は、通所も最小限になり、ルーチンがくずれて刺激も少ない。そのせいか、父の物忘れの症状はさらに進んだような気がする。さらに、父はピック病のためか、マイペースが極まり、「待つ」行為ができない。「そこに歯科はないから、ちょっと待って」と言っても聞かず、取れた歯を持って何度も出かけようとする。
歯科医は緊急事態宣言中、予約のない状況で診てもらえるものなのか? とりあえず、以前通っていた歯科医院を探しあて、タクシーで行こうと考えたが、そこは休みだった。その日中になんとかしないと、入れ歯がかけられない不便もあり、父は、私のすきを見て一人で家を出てしまう危険が大きい。
比較的近くにあり、私が一度、診てもらったことのある歯科医院に電話で状況を説明すると、「今から来たら?」と言ってくれた。この状況下で歯科医に行くのは避けたかったが、考えてみると、コロナウイルスはのどにも多くいると言われているので、歯科の医師や衛生士さんのほうがよほど怖いだろう。診てもらえるだけでありがたい。
受付で検温。発熱はなく、とりあえず応急処置をお願いしたが、父の口の中を見た先生が言うには、「もっと簡単なことかと思っていたら、けっこうえらいことになってる」。
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うちも認知症の父と同居で、私はフリーランスのライターです。 というわけで、同じようなことをやってます。苦笑 特に「自分のことは自分が一番よくわか...
うちも認知症の父と同居で、私はフリーランスのライターです。
というわけで、同じようなことをやってます。苦笑
特に「自分のことは自分が一番よくわかっていると言い張る」「尿失禁の自覚がなく着替えさせるのが一苦労」(このあたりはまぁありがちだと思いますが)、「あめの過食」、「リモート取材時の勝手な出演」については、「同じことで悩んでいる方がいたんだ!」とある意味うれしくなりました。
うちの父は現在96歳で、ほぼアルツハイマー型。記憶障害が日に日にひどくなっており、新型コロナ流行に伴う状況が理解ができていないことに苦労しています。
それに加えて、なんと身体機能や見かけが70代前半(!)という医師お墨付きの異常さもかなり難点です。
母は早くに亡くなり、私はひとり娘。夫がよく協力してくれるのが救いではありますが、「仕方ないなぁ」「かわいそうだ…」と思いつつも、毎日腹が立つしイライラするし、精神の均衡をなんとか保ちながらやってます。
この状況なので、外取材が激減したのは良かったともいえるのですが、私の専門分野はコロナ禍の影響をモロに受けるところでもあり、先が見えない不安から精神的にじわじわ追い詰められている感じもあったり。
そうそう、20199年(2018年分)までは父は自分でパソコン使って確定申告をやってたのですが、昨年は結局やらず(今思えば認知症が始まっていた)。私も父の医療費明細の管理などしてなかったので20200年分はもう無理ですが、2021年分はしっかり管理しようと思ってます。でも今年977歳だからなぁ~。
とにかくコロナだけでも早いとこなんとかなりますように!!
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