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田村専門委員の「まるごと医療」

医療・健康・介護のコラム

夢を諦めない 若年性がん患者が語る

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オンライン座談会を開催

夢を諦めないで 若年性がん患者が語る

 ヨミドクターでは「がんを語る」と題して、がん患者さんによる座談会を不定期に開催し、その内容を掲載している。今年前半は新型コロナの影響もあって、患者さんにお集まりいただく催しを開くことができずにいたが、先週末ようやく、オンライン会議システムを用いて今年最初のがん患者座談会を開催することができた。今回は、若年性がんの患者団体「STAND UP!!」にご協力をいただき、呼びかけに応じてくれた20~30歳代の患者さん4人とオンラインで結んだ。参加者はそれぞれ、突然のがん告知という現実に直面しながらも、がん闘病とともに仕事や結婚など人生の将来を見つめ、「夢を諦めない」というメッセージを送ってくれた。(座談会の詳しい内容は6月末に「がんを語る」コーナーに掲載の予定です)

AYA世代のがん 年間約2万人が発症

 がん診療においては近年、小児がんとともに、AYA世代のがんに焦点が当てられている。AYA(アヤ)とは「Adolescent and Young Adult」の略で、主に15~39歳の思春期から若年の成人を指す。

 がん全体から見れば患者数が少ないことから従来は顧みられることがあまりなかったが、年齢によるがんの種類の特徴や治療法などが一般的な成人のがんとは異なることなどに加え、若い世代ならではの学校や仕事、結婚、出産などの悩みに直面しながら闘病を続けていくことの課題が指摘されるようになった。全国がん登録(2017年)によると、全国で1年間に2万1千人余りが発症している。

 今回参加していただいた患者さん4人(男女各2人)は、それぞれがんの種類が異なる。患者数が少ない希少がんであったり、年齢的に発症が珍しいがんであったりと、確定的な診断がつくまでに病院を何か所も転々とした人も複数いた。専門的に治療できる病院が限られているとか、標準的な治療法が確立されていないケースもあり、病院や治療法選びも手探りにならざるを得ない難しさがある。

 告知後、本格的な治療開始を前に直面するのが、将来へ向けて精子や卵子の凍結保存をどうするかという問題だ。治療の選択と並行しながら説明を受けることになり、考える時間や精神的な余裕がそれほどない中で、決断を迫られることになる。挑戦してもうまくいかないこともあれば、将来役に立つのかどうかも、その時になってみないと分からない。もちろん、手術や抗がん剤治療を経て病状が一段落したとは言っても、再発の不安が消えたわけではないし、がんの種類によっては治療そのものが長く続くこともある。

仕事、恋愛、結婚

 参加者の中には、上司や職場の理解によって仕事を続けることができている人もいた一方で、職場を変わらざるを得なかった人もいた。スキルアップのための転職をがんのせいで諦めたくないと、がんであることを明かした上で転職活動を続け、自分の働きやすい仕事環境づくりに取り組んでいる人もいた。がんを経験したことを機に生き方を考え直し、NPOの活動を始めた人もいた。

 病気が悪性腫瘍だとわかったタイミングで、「距離を取りたい」と告げたまま、連絡が取れなくなった恋人もいる。がん治療がひと段落したばかりといった状況のため、今はまだ具体的な恋愛のことまで考えられないという声もある一方で、自分の病気のことを含めて理解してくれる人が将来現れてくれることに、思いを馳せる声もあった。

経験を社会のために生かしたい

 若年性のがんという「ある意味、貴重な経験をさせてもらった」と表現する参加者もいた。自分の経験を通じて、次の世代の子どもたちに対し、生きる意味や、病気になっても苦しい経験をしても生きていけるというメッセージを伝えていきたいと話す。

 また、別の患者さんは、仕事をしていくうえで、周囲の環境を整えたり制度を改めていったりすることは、がんの患者であるかどうかに関わらず、様々な事情を抱えて働いている人にとっても働きやすい社会づくりにつながるのではないかと感じている。「自分のできること、できないことをはっきりさせ、できることを遠慮せずにやればいいと思う」と語る。

 「がんを理由に決して諦めたくない。治療も頑張ったし、私たち、もっと幸せになってもいいと思う」とある患者さん。治療を終えて元気でいる自分の姿を伝えることは、自分のためでもあるし、同じ病気と闘っている他の患者さんを勇気づけることにもなると、ブログやSNSで発信を続けている。

 座談会の参加者は、がんの告知を受けて1~2年ほどで、本格的な治療を終えたばかりや、治療を継続中の人もいる。まだ記憶に新しい過去を振り返り、涙で言葉を詰まらせる場面もあった。厳しい治療を乗り越え、また闘病の渦中にありながら、情報発信をしてくれた若いがん患者の声にぜひ耳を傾けてほしい。(田村良彦 読売新聞専門委員)

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田村 良彦(たむら・よしひこ)

 読売新聞東京本社メディア局専門委員。1986年早稲田大学政治経済学部卒、同年読売新聞東京本社入社。97年から編集局医療情報室(現・医療部)で連載「医療ルネサンス」「病院の実力」などを担当。西部本社社会部次長兼編集委員、東京本社編集委員(医療部)などを経て2019年6月から現職。

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