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ペットと暮らせる特養から 若山三千彦 

医療・健康・介護のコラム

[愛猫と暮らしたい](上)自宅でいつまで一緒に? 腰の悩みで募る不安

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[愛猫と暮らしたい](上)自宅でいつまで一緒に? 腰の悩みで募る不安

後藤さんと愛猫の祐介君(さくらの里山科で)

 後藤昌枝さん(仮名)と愛猫の祐介君は、うちのホームで2番目となる、愛猫との同伴入居でした。2人(1人と1匹)が、私が経営するペットと一緒に入れる特別養護老人ホーム、さくらの里山科に入居したのは、2013年秋のことです。だから、間もなく丸7年になります。この7年間、幸せに暮らしてきたと私たちは思っています。

60歳で「もう新しいペットを飼ってはいけない」と

 後藤さんは動物好きの一家に生まれたそうです。幼い頃、家には犬、猫、ウサギ、ヤギなどが常にいて、動物に囲まれて育ちました。それは大人になってからも変わらず、常に複数の犬や猫を飼っていました。しかし、60歳になり、長年飼っていたワンちゃん(ポメラニアン)が死んだ時、「もうペットを飼うのはあきらめよう」と思ったそうです。

 ペットを飼っている人の多くが、高齢になってくると「新しいペットを迎えるのは無理かな」と考えるようになります。自分が身動きできなくなったり、亡くなったりすると、ペットが残されてしまうからです。ペットが好きな人ほど、このことを強く意識します。後藤さんも同じでした。「60歳では、もう新しいペットを飼ってはいけない」と、自分に言い聞かせたそうです。

海に流されようとしていた子猫と運命の出会い

 しかし、その半年後、祐介君との運命の出会いをしてしまいます。海岸で、まだ目も開いていない子猫を海に流そうとしているおばあさんと出会ってしまったのです。

 飼っている猫や犬が子供を産んだら、まだ情が湧く前に海や川に流してしまうという習慣は、横須賀でも古いエリアにはまだ残っていました。ただし、祐介君は現在14歳ですから、これは14年前の話です。現在は、このような習慣はほぼなくなったと思いたいです。

 新しいペットを迎えるのをあきらめようと決意していた後藤さんですが、まさに目の前で失われようとしている命を見て、放っておくことはできませんでした。こうして祐介君は後藤さんに助けられたのです。

 祐介君は助けられた時、あまりにも幼く、獣医師さんは「育てるのは無理だろう」と言ったそうです。しかし、何十年も動物の世話を続けてきた後藤さんは、見事に祐介君の命を守りました。祐介君が来た当初は、夜中も2時間おきにスポイトでミルクを与えたそうです。

食事もベッドもいつも一緒

 こうして後藤さんと祐介君は最高のパートナーになりました。仕事を早期退職していた後藤さんは、いつも家にいます。その傍らには、ぴたりと祐介君が寄り添っていました。後藤さんが食事をとる時は、テーブルで向かい合ったイスの上に祐介君は座って、後藤さんを見守っています。後藤さんが洗濯物を干すために2階のベランダに行くのにも付いていきます。もちろん寝る時も一緒です。後藤さんのベッドで、一緒に布団に入っていました。

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若山 三千彦(わかやま・みちひこ)

 社会福祉法人「心の会」理事長、特別養護老人ホーム「さくらの里 山科」(神奈川県横須賀市)施設長

 1965年、神奈川県生まれ。横浜国立大教育学部卒。筑波大学大学院修了。世界で初めてクローンマウスを実現した実弟・若山照彦を描いたノンフィクション「リアル・クローン」(2000年、小学館)で第6回小学館ノンフィクション大賞・優秀賞を受賞。学校教員を退職後、社会福祉法人「心の会」創立。2012年に設立した「さくらの里 山科」は日本で唯一、ペットの犬や猫と暮らせる特別養護老人ホームとして全国から注目されている。20年6月、著書「看取みといぬ文福ぶんぷく 人の命に寄り添う奇跡のペット物語」(宝島社、1300円税別)が出版された。

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