気象予報士ママの「健康注意報」 新見千雅
医療・健康・介護のコラム
女性に多い低血圧症…夏季もご用心、症状を軽くするには?
低血圧症の症状を軽くするために
本態性低血圧で症状がある方は、まずは、規則正しい日常生活を送ることで、自律神経を整えることが大切です。また、ミネラルなど栄養バランスのとれた食事や、水分を多めにとる方がよいでしょう。
さらに、運動をして下肢の筋肉量を増やすことで、血液を心臓に戻すポンプ作用を向上させることが期待できます。
ただし、運動中は筋肉の血流量が増加するため、「心臓から拍出される血液量」も増えますが、もし激しい運動を急に中止すると、筋肉の血流量が増えたままの状態で「心臓から拍出される血液量」が減り、血圧が低くなることがあります。ゆっくりと息を整えながら運動を終えると、血液が心臓に戻りやすくなり、急な血圧低下を起こしにくくなるでしょう。
長時間立ち仕事をすることが多い方は、下半身から心臓に血液が戻りやすいように下肢の筋肉量を増やしたり、弾性ストッキングをはいたりすると血圧が下がることに対する予防になるかもしれません。
そして、めまいや立ちくらみを引き起こす、起立性低血圧をできるだけ予防しましょう。
起立性低血圧は、寝た姿勢や座った姿勢から立ち上がったときに、3分以内に血圧の低下(収縮期血圧が20mmHg以上低下するか、または収縮期血圧の絶対値が90mmHg未満に低下、あるいは拡張期血圧の10mmHg以上の低下)がみられるものをいいます。
人が横になった状態から立ち上がると、重力の影響で500ml~800mlの血液が 胸腔 内から腹部内臓へ移動して、心臓に戻ってくる血液の量が約30%減少します。そのため、心臓から拍出される血液量が減少して、血圧が低下します。
正常では、立ち上がることにより血圧が下がりそうになると、交感神経によって末梢血管が収縮し、心拍数の増加などが起こり、血圧が一定に保たれ、血圧が過剰に下がるのは抑制されます。
しかし、自律神経障害により交感神経の活性化が遅れる、循環血液量が異常に減るなどすると、血圧を一定に保つことが難しくなり、脳の血流が不十分になり、症状がひどい時には、気を失ったり、転倒して骨折などの大けがをしたりする恐れもあります。
起立性低血圧が起きるような状況を避けるには、急激な姿勢の変換をしないようにゆっくり立ち上がることが大切です。起床時は起き上がる前に、足を軽く動かすといいかもしれません。また、暑い日はとくに、こまめに水分をとるようにして血液量が少なくなるのを防ぎましょう。
お風呂にゆっくり入る時や、アルコールを飲んだ時も、副交感神経が優位になり末梢の血管が拡張されて、血圧が下がることがあります。長時間立ったまま動かない姿勢を保つことも、重力で下肢の血液の流れが停滞するため、心臓に戻ってくる血液の量が減り、血圧の低下を起こすことがあります。
症状がひどいなら貧血との鑑別を
もし、低血圧症によると思われるめまいや立ちくらみが起きた時は、転倒しないように、まずは姿勢を低くしましょう。
症状が治まった後も急には立ち上がらないように、何かにつかまりながらゆっくりと動くとよいでしょう。
一方で、めまいや立ちくらみなどの症状は、貧血から起こることもあります。
貧血には様々な種類がありますが、とくに女性には月経があるため鉄欠乏性の貧血を起こしやすくなります。低血圧と貧血は似た症状があるため混同されがちですが、違うものです。
低血圧はこれまで述べてきたように血圧が低い状態のことで、貧血は血液中の赤血球やヘモグロビンの量が少ない状態のことを言います。
あまりにもめまいや立ちくらみがひどいなど体調の悪さを感じるなら、まずは受診して、低血圧なのか貧血なのかを診断してもらうことをお勧めします。血液検査の結果、貧血が認められれば、貧血の改善が必要ですし、低血圧と貧血の両方を併せ持っていることもあります。
子育て中は忙しくて、ママ自身の体調の事は後回しになりがちですが、健康に過ごすために、めまいや立ちくらみといった症状を見過ごさないように気を付けたいですね。
(新見千雅・日本気象協会 気象予報士)
監修 鈴木孝太・愛知医科大学医学部教授(衛生学講座)
※気象予報士ママの「健康注意報」は今回で終了します。ご愛読ありがとうございました。
2 / 2
【関連記事】
※コメントは承認制で、リアルタイムでは掲載されません。
※個人情報は書き込まないでください。