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田村専門委員の「まるごと医療」

医療・健康・介護のコラム

新型コロナ時代の熱中症予防とは

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マスクは適宜外して

新型コロナ時代の熱中症予防とは

 暑い日が続いている。梅雨から夏の暑い季節に向けて、熱中症の予防に努めたい。暑さを避ける、小まめに水分を取る、体調管理に気をつけるといった従来の予防策に加え、今年の夏は、新型コロナウイルス感染症の予防も考え合わせながら、感染リスクの少ない場面ではマスクを外す、エアコンを使いつつ、換気も小まめに行うといったことも大切になりそうだ。

 厚生労働省は5月、新型コロナウイルスを想定した「新しい生活様式」における熱中症予防の留意点について発表した。それによると、夏の気温・湿度が高い中でマスクを着用すると、熱中症のリスクが高くなる恐れがあるとして、「屋外で人と十分な距離(少なくとも2m以上)が確保できる場合には、熱中症のリスクを考慮し、マスクを外すようにしましょう」としている。

 マスクを着用している場合には、強い負荷の作業や運動は避けて、のどが渇いていなくても小まめに水分補給をすること、エアコンを使っていても換気が必要になるため、小まめに温度設定を調整することなどの注意を呼びかけた。

エアコン使用時も時々窓を開けて換気を

 日本救急医学会、日本臨床救急医学会、日本感染症学会、日本呼吸器学会のワーキンググループは6月1日、学術団体として熱中症予防に関する提言を出した。

 最初に掲げたのは、「室内換気に十分な配慮をしつつ、小まめにエアコン温度を調節し室内温度を確認」すること。熱中症は室内で多く発生していることから、エアコンによる室温管理が重要である一方、通常の家庭用エアコンは空気を循環させるだけで、換気の機能はないという。そのため、新型コロナ感染予防のためには、適宜、窓を開けて風通しをよくすることが重要だとしている。扇風機なども活用することや、すだれやレースカーテンなどで直射日光を避けるなどの工夫にも触れた。

のどの渇きに関係なく小まめに水分補給を

 提言ではまた、マスクの着用によって体に負担がかかることを考慮し、周囲と距離を取るなどの感染対策に注意しながら、適宜マスクを外して休憩することが大切と呼びかけた。マスク着用が体温に及ぼす影響を学術的に研究した報告はあまりなく、「現時点ではマスクをつけて運動しているから必ず熱中症になりやすいとも言えない」としつつ、「心拍数、呼吸数、二酸化炭素、体感温度の上昇から、マスクをつけることで、体に負担がかかると考えられる」と指摘した。

 熱中症予防には小まめな水分補給が大切。口の渇きはそもそも脱水予防の指標にはならないとして、口の渇きには関係なく塩分を含む経口補水液の頻回摂取を訴えた。このほか、暑さに慣れていない時期が危ないので適度な運動で徐々に体を慣れさせること、独居高齢者など熱中症に弱い人には特に注意が必要なこと、日頃の体調管理を行い観察記録をつけることなどを提言した。

2歳未満の子どもにマスクは危険

 マスクについては、日本小児科医会が5月25日、2歳未満の子どもへの使用はやめるよう呼びかけるメッセージを発表した。

 それによると、乳児の呼吸器の空気の通り道は狭いため、マスクは呼吸をしにくくさせ呼吸や心臓への負担になること、マスクそのものや (おう)() 物による窒息のリスクや熱中症のリスクが高まること、顔色や唇の色、表情の変化など体調の異変への気づきが遅れることなどの心配がある一方、子どもが新型コロナウイルスに感染することや重症化する例は少ないことなどを理由としている。米国でも、2歳未満の子どもには使用しないよう警告されているという。

 新型コロナウイルスにはまだ不明な点が多くある。日本救急医学会などの提言でも、新型コロナウイルス感染症と気温や湿度との関連性について十分なエビデンスに基づくデータはないことから、熱中症対策に関しても今後、更新される可能性に言及している。

 マスクを外す機会が増えそうとは言っても、手洗いやアルコール消毒、人と距離を取り「3密」を避けるといった基本的な感染対策は変わりなく、むしろますます重要になる。十分な睡眠や栄養などで体調を整えて、暑い夏を乗り切りたい。(田村良彦 読売新聞専門委員)

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田村 良彦(たむら・よしひこ)

 読売新聞東京本社メディア局専門委員。1986年早稲田大学政治経済学部卒、同年読売新聞東京本社入社。97年から編集局医療情報室(現・医療部)で連載「医療ルネサンス」「病院の実力」などを担当。西部本社社会部次長兼編集委員、東京本社編集委員(医療部)などを経て2019年6月から現職。

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