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腎盂腎炎…下半身 清潔保ち予防

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 腎臓にある「 腎盂じんう 」で細菌が増殖し、炎症が起きる病気を腎盂腎炎という。免疫力が落ちた高齢者や糖尿病などの持病がある人はかかりやすく、重症化もしやすいため、特に注意が必要だ。(長尾尚実)

腎盂腎炎…下半身 清潔保ち予防

  女性リスク高く

 腎盂の「盂」は元々、飲食物を入れる口の広い容器を指す言葉だ。腎盂は、血液中の老廃物や余分な塩分などを し取って作られた尿が最初に集まる場所で、尿は、ここから尿管へ送り出される。

 腎臓や尿管、 膀胱ぼうこう 、尿道は本来、無菌状態に保たれている。便に含まれる大腸菌などの細菌が尿道から侵入することもあるが、通常は排尿時に体外へ押し流され、問題にならない。

 ところが、尿路結石や前立腺の肥大、妊娠の影響などで尿の通り道が狭くなると、尿の流れが悪くなり、細菌を十分に排出できなくなる。膀胱と尿管の間には、尿の逆流を防ぐ弁があるが、うまく機能しないと尿とともに細菌が腎臓に向かって逆流しやすくなる。こうして腎盂に至った細菌が炎症を引き起こす。

 尿道が男性より短い女性の方が患いやすい。男性も加齢で前立腺が肥大する傾向があり、年齢とともにリスクが高まる。

 糖尿病の患者や抗がん剤を使った治療をしている人は、免疫力が大幅に落ちており、健康な人なら何の影響もない細菌にさえ感染してしまう恐れがある。

 腎臓自体は炎症を起こしても痛みを感じないが、腫れると腎臓を包む薄い膜が引っ張られ、背中や腰などに激しい痛みが生じる。高熱が出ることが多く、吐き気や 嘔吐おうと などの症状が表れる場合もある。炎症によって うみ で濁った尿が出たり、背中をたたくと響くように痛んだりすることもある。

 炎症が広い範囲に及ぶと、老廃物などを排出できなくなる「急性腎障害」に陥る。細菌が血液に入り、全身に回ると、様々な臓器に炎症が起きる「敗血症」にもなりかねず、命にかかわる。このため、一刻も早い治療が必要だ。

 尿検査で細菌の有無を調べるなどして診断がつくと、細菌の増殖を抑えたり、殺菌したりする抗菌薬(抗生物質)を使う。軽症の場合は2、3日ほどで熱が下がり、症状が改善する。

  大腸菌が原因7割

 大腸菌が原因の約7割を占めるため、抗菌薬はまず、大腸菌に効くタイプを選ぶ。尿に含まれる細菌が別の種類と分かれば、その細菌に効く抗菌薬に切り替える。

 抗菌薬は、途中で勝手にやめるなど、中途半端な飲み方をしない。きちんと飲み続けないと、いったん減った細菌が再び増えて症状がぶり返したり、薬が効きにくい細菌に変化してしまったりする。

 予防には、尿道から細菌が侵入するのを防ぐことが肝心だ。こまめにシャワーを浴びたり、入浴したりして下半身を清潔に保つ。尿を我慢せずにトイレに行き、細菌を尿と一緒に排出する。

 大阪急性期・総合医療センター副院長の林晃正さんは「この病気は、免疫力が落ちると発症しやすくなります。過労は免疫力低下を招くので、働き盛りの人もこの病気と無縁ではありません。規則正しい生活と十分な睡眠も予防に大切です」と話している。

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