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山中龍宏「子どもを守る」

妊娠・育児・性の悩み

たばこ、灯油、針…子どもの誤飲 家庭で吐かせてはいけない理由

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 乳幼児は必ず誤飲するものと考えてください。そして、誤飲した場合に家庭でできる応急手当を知っておいていただきたいと思います。また、治療の原則も知っておくとよいと思います。

たばこ、灯油、針…子どもの誤飲 家庭で吐かせてはいけない理由

イラスト:高橋まや

 45年前、私が大学病院で研修をしていたころ、夜の救急外来には毎晩のように、たばこを誤飲した子どもがやってきました。その当時、「たばこ1本の中には、子ども2人を死亡させる量のニコチンが入っている」と言われ、受診してきた子ども全員に胃洗浄を施していました。生後10か月前後の乳児が多く、処置台の上に子どもを寝かせて 側臥位(そくがい) (横向き)にし、泣き叫んでいるのをスタッフと母親で押さえつけ、口から胃管を挿入します。その後、胃の中にぬるま湯をゆっくり入れては出す作業を繰り返します。子どもは泣き続け、そのうちに母親も泣きだし、排出した液の中に刻まれたたばこの葉が少し浮いているのが見え、処置台の上は、子どもの涙やよだれ、足元は漏れた水でびしょびしょと、 凄惨(せいさん) な状況になりました。「教育的指導」として、保護者には胃洗浄に立ち会ってもらっていましたが、10%の子どもは再び誤飲し、受診しました。

家庭では吐かせないのが原則

 飲み込んだものが、体に障害を及ぼすかどうかを検討するのが中毒学です。誤飲したものには、消化管から吸収されるものと吸収されないものがあります。吸収されないものは、消化管の中で膨らんだり吸着したりしない限り、そのまま便と一緒に排出されます。針を飲みこんでも、消化管に引っかからずに出てきます。しかし、吸収されるものは、体に作用する場合があります。

 本来、飲み込んではならないものを口に入れた場合、口の中にあるものは取り出します。飲み込んでしまったものは、以前は水などを飲ませて吐かせるのを基本としていました。しかし、家庭ではうまく吐かせることがむずかしく、吐いたものが気管に詰まることもあるため、現在では、家庭では吐かせないのが原則となっています。

 吐かせてはいけない場合とその理由を知っておきましょう。

  • 意識がない時、けいれんを起こしている時(吐かせたものが肺に入り、肺炎を起こす)
  • 強酸性・強アルカリ性のものを飲んだ時(食道を再度通過して損傷が重篤化する)
  • 灯油、ベンジン、有機溶剤を含む製品を飲んだ時(吐かせたものが肺に入り、肺炎を起こす)

 心配な場合は、 日本中毒情報センター か、かかりつけ医に相談します。医療機関を受診する場合には、誤飲したものの残りやパッケージを持参しましょう。日本中毒情報センターに電話するときは、いつ、何を、どのくらい飲んで、いまどんな状態かをはっきり告げる必要があります。

保護者が見ていないところで発生

 飲み込んだ製品や製剤が腸管から吸収されるものか否か、吸収されたものが血中に入って標的臓器に運ばれ、どのような作用をするかによって症状が決まります。吸収されたものの作用は、一般的にはその量が多いほど強く表れます。医療機関での治療としては、化学物質を消化管から除去するために、胃洗浄、活性炭や下剤の投与、腸洗浄を行います。吸収された化学物質に対しては、血液浄化を行い、解毒薬や 拮抗(きっこう) 薬がある場合には投与して、心拍や呼吸、血圧を見ながら全身管理をします。

 誤飲して中毒を起こすかどうか、どのような治療が必要かを判断するためには、「体重〇キロ・グラムの人が、何時に、どのような物質を、どれくらい飲んだか」を知らなければ、適切な治療を行うことができません。また、胃の中に食物がある場合とない場合では吸収に差がみられます。乳幼児の誤飲は、保護者が見ていないところで発生する場合が多く、いつ飲んだのか、何をどれくらい飲んだのかがわからないことがほとんどです。

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yamanaka-tatsuhiro

山中 龍宏(やまなか・たつひろ)

 小児科医歴45年。1985年9月、プールの排水口に吸い込まれた中学2年女児を看取みとったことから事故予防に取り組み始めた。現在、緑園こどもクリニック(横浜市泉区)院長。NPO法人Safe Kids Japan理事長。産業技術総合研究所人工知能研究センター外来研究員、キッズデザイン賞副審査委員長、内閣府教育・保育施設等における重大事故防止策を考える有識者会議委員も務める。

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