文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

山崎まゆみの「心もとろける癒やしの温泉」

医療・健康・介護のコラム

3密を避け、静かな「秘湯」で身も心も……

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

 新型コロナウイルスの感染拡大防止に伴う緊急事態宣言は解除されましたが、県をまたいでの移動には、まだ制約があります。思いっきり旅に出たい気持ちを募らせながら、その時を待っている人も多いのではないでしょうか。

 私もその一人です。こんなにも旅に出ることなく、温泉にも入れない期間が長かったのは初めてのこと。体が砂漠化しています。旅の潤いで一滴の水を得たい!

 けれど、ウイルス感染を考えると、やはり3密を避けなければ。

 それなら、秘湯がいい。

3密を避け、静かな「秘湯」で身も心も……

奥湯沢の貝掛温泉。まさに大自然に溶け込んだ一軒宿です

標高700メートル。大自然の「ぽつんと一軒宿」

 秘湯とは、秘境にある温泉を指しますので、宿泊先も大自然の中にぽつんとある一軒宿がほとんどです。客室数は20室前後とこじんまりしていて、大型旅館に比べると、そもそも人に会う機会が限られます。3密を避けられる環境にあるのです。

 私がいま思い浮かべる秘湯は新潟県の 貝掛(かいかけ) 温泉。JR東日本・越後湯沢駅から車で20分程の所の「奥湯沢」と呼ばれる場所です。国道17号看板の矢印通りにゆくと急な貝掛坂と、車幅ギリギリくらいの狭くてスリリングな貝掛橋がかかっています。それを渡り切ると貝掛温泉です。たどり着くまでに期待が膨らみます。

 新潟の日本旅館らしく、豪雪の重みにも耐える、見事な木造建築です。

 車から降りるとひんやりとします。山からの涼やかな風が吹き抜ける。渓流の音が聞こえてくる。標高700メートルの秘湯であり、同時に避暑地でもあるわけです。

 貝掛温泉は目に効くと伝えられてきました。メタホウ酸と呼ばれる温泉成分が目に良い、と伝えられ、昭和初期までは源泉で目薬が作られ、販売していたこともあります。

3密を避け、静かな「秘湯」で身も心も……

この季節、新緑が目の疲れを癒してくれます

 今でも、源泉が注がれる露天風呂の湯口には、温泉で目を洗うお客さんの姿があります。岩造りの露天風呂は30人程が入れそうな広さですから、ソーシャルディスタンスも保てます。

 周囲は 鬱蒼(うっそう) とした木々に囲まれ、視界一面が木々の緑に染まります。この緑を見ているだけで眼精疲労も回復しそうです。

貝掛温泉のぬる湯は目にもいいと

 内風呂の大浴場は、37度程の「ぬる湯」です。入った瞬間は冷たさを感じましたが、30分もすると、体がほどけるように。ぬる湯だからこそ、じっくりと入ることができて、末梢神経まで熱が行き届きます。ぬる湯に1時間半ほどつかり、指先はしわしわになり、心身ともにとろけてしまいそう。お部屋に戻る頃には身体の芯がほかほかです。

 ぬる湯ですから、出たり入ったりを繰り返ることもしやすいです。

 湯上がり (どころ) には、目に良いといわれるメグスリノ木のお茶が用意されています。入浴前後に1杯ずつ。ほのかな苦みは大人だから楽しめる味。

 そして食事ですが、さすがはコシヒカリの産地です。茶わんに盛られたご飯の粒は、食べるのがもったいないくらいに、光り輝いています。米どころにやってきたことを実感しながら味わいましょう。お米そのものだけでなく、米が育ったその土地の水で炊くことで、このおいしさがもたらされているのでしょう。

 お部屋は過不足ない (しつら) えで、掃除が行き届いています。

3密を避け、静かな「秘湯」で身も心も……

貝掛温泉はお部屋もノスタルジックな雰囲気いっぱいです

 こうした秘湯は、たとえば森の中の一軒宿や清流沿いの宿、もしくは海に面した宿と、自然豊かなことがウリ。

 一軒宿ですから、宿が源泉を有することが多く、これを「自家源泉」と呼びます。

 食事には、ごちそうがずらりといった豪華さはありませんが、新鮮な山の幸、海の幸がとってもおいしい。素材の良さを生かした田舎料理も秘湯の宿ならではの魅力です。

 さらに、コストパフォーマンスが抜群。うまく平日を利用できたら、1万円前後で宿泊できる宿もあります。

秘湯にたどり着くために

 自然環境が最高、お湯がいい。料理は素材が良くて、コスパもいい。そんなメリットがそろうのが、「 日本秘湯を守る会 」の加盟宿です。

 秘湯には憧れがあるけれど、どう探したらいいか、わからないという方には、「日本秘湯を守る会」の加盟宿から選ぶのもひとつの方法です。

 もしくは、「秘湯」「自家源泉」「一軒宿」などで検索しても秘湯の宿の情報にたどり着けます。

 ちなみに、本連載で記してきた高峰温泉(長野県)、栃尾又温泉(新潟県)、越後長野温泉(新潟県)、 峩々(がが) 温泉(宮城県)は、「日本秘湯を守る会」に所属しています。

 ぜひ、あわせてご覧になってみてください。

貝掛温泉

貝掛温泉
【 所在地 】〒949-6211 新潟県南魚沼郡湯沢町三俣686
【 電 話 】025-788-9911
【 泉 質 】ナトリウム・カルシウム、塩化物温泉・弱アルカリ性低張性温泉
【 効 能 】白内障、眼底出血、ドライアイ、眼精疲労、やけど、切り傷、神経痛、腰痛、冷え性、五十肩、病後回復
【アクセス】JR東日本・越後湯沢駅からバスで貝掛温泉入口。バス停までの送迎あり。
【ホームページ】https://kaikake.jp/

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

yamazaki_mayumi_prof

山崎まゆみ(やまざき・まゆみ)

温泉エッセイスト、ノンフィクションライター、VISIT JAPAN大使、跡見学園女子大学兼任講師。世界32か国1000か所以上の温泉を巡り、「温泉での幸せな一期一会」をテーマに各メディアでリポートしている。『続・バリアフリー温泉で家族旅行』(昭文社)等著書多数。最新刊は『行ってみようよ! 親孝行温泉』(昭文社)。内閣官房東京オリンピック競技会・東京パラリンピック競技会推進本部事務局「ユニバーサルデザイン2020関係府省等連絡会議 街づくり分科会」「ユニバーサルデザイン2020評価会議」に参画し、日本の「バリアフリー温泉」の推進に力を注いでいる。温泉情報はTwitter、FB、インスタグラムで更新中。

山崎まゆみの「心もとろける癒やしの温泉」の一覧を見る

コメントを書く

※コメントは承認制で、リアルタイムでは掲載されません。

※個人情報は書き込まないでください。

必須(20字以内)
必須(20字以内)
必須 (800字以内)

編集方針について

投稿いただいたコメントは、編集スタッフが拝読したうえで掲載させていただきます。リアルタイムでは掲載されません。 掲載したコメントは読売新聞紙面をはじめ、読売新聞社が発行及び、許諾した印刷物、読売新聞オンライン、携帯電話サービスなどに複製・転載する場合があります。

コメントのタイトル・本文は編集スタッフの判断で修正したり、全部、または一部を非掲載とさせていただく場合もあります。

次のようなコメントは非掲載、または削除とさせていただきます。

  • ブログとの関係が認められない場合
  • 特定の個人、組織を誹謗中傷し、名誉を傷つける内容を含む場合
  • 第三者の著作権などを侵害する内容を含む場合
  • 企業や商品の宣伝、販売促進を主な目的とする場合
  • 選挙運動またはこれらに類似する内容を含む場合
  • 特定の団体を宣伝することを主な目的とする場合
  • 事実に反した情報を公開している場合
  • 公序良俗、法令に反した内容の情報を含む場合
  • 個人情報を書き込んだ場合(たとえ匿名であっても関係者が見れば内容を特定できるような、個人情報=氏名・住所・電話番号・職業・メールアドレスなど=を含みます)
  • メールアドレス、他のサイトへリンクがある場合
  • その他、編集スタッフが不適切と判断した場合

編集方針に同意する方のみ投稿ができます。

以上、あらかじめ、ご了承ください。

最新記事