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医療・健康・介護のコラム

「健口」で健康(14)お酒弱い人 歯周病に注意

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  このシリーズでは、予防歯科学が専門の大阪大歯学部教授、天野敦雄さんに聞きます。(聞き手・佐々木栄)

「健口」で健康(14) お酒弱い人 歯周病に注意

 昔から「酒は百薬の長」と言われ、お酒は適量なら体に良いとされています。では、歯に与える影響はどうなのでしょうか。

 G介さん(50)は歯周病治療のため大学病院を受診しました。担当医に1日の飲酒量とともに、飲んで顔が赤くなるかどうかも聞かれました。「赤くなります。でも関係あるんですか」。担当医が「赤くなる人が過度な飲酒をすると、歯周病が進みます」と答えると、「ええっ!」とG介さんは青ざめました。

 お酒のアルコールは胃や小腸で吸収され、肝臓では酵素の力によって分解されて「アセトアルデヒド」という物質に変わります。この物質の毒性のせいで、顔が赤くなり、頻脈や 動悸どうき などを引き起こし、ときに気分が悪くなります。

 分解酵素の働きが活発かどうかは人それぞれ遺伝的に決まっています。酵素がよく働き、早く分解できる人はお酒に強くて赤くなりにくい。一方、お酒に弱い人は、酵素がよく働かず、すぐ顔が赤くなり、飲み過ぎると翌日も血液中にアセトアルデヒドが残って、二日酔いになります。この物質が肝臓に悪いことはよく知られていますが、歯ぐきにも悪影響を及ぼします。

 私が所属する研究チームは、歯周病とお酒との関係を明らかにしました。

 お酒に弱く、すぐ顔が赤くなる人は、ビールなら600ミリ・リットル、ワインなら330ミリ・リットル以上を毎日飲むと、強く、顔が赤くなりにくい人が同程度を飲むのと比べ歯周病に2倍以上なりやすいという結果が出ました。これは、アセトアルデヒドの毒性によって免疫力が低下し、歯周病になるリスクが高まるためです。お酒に弱い人は、歯の健康を保つためにも適度な飲酒を心がけましょう。

【略歴】
 天野 敦雄(あまの あつお)
 大阪大学歯学部教授。高知市出身。1984年、大阪大学歯学部卒業。ニューヨーク州立大学歯学部博士研究員、大阪大学歯学部付属病院講師などを経て、2000年、同大学教授。15年から今年3月まで歯学部長を務めた。専門は予防歯科学。市民向けの講演や執筆も多く、軽妙な語り口・文体が好評を得ている。

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