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Dr.若倉の目の癒やし相談室 若倉雅登

医療・健康・介護のコラム

眼科医の私が白内障手術を受けた…いつもは医師として通勤している病院で手術を受けることに

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眼科医の私が白内障手術を受けた…医師として通勤している病院で手術を受けることに

 最近のカメラには逆光補正機能がありますが、カメラの素人がそのまま逆光で被写体を撮ると、大体は顔が黒くなり、使えない写真になります。でも、人間の目は補正が利き、普通はそんなに質の悪い映像にはなりません。

 ところが私の目は、この2、3年、逆光時の映像の質が低下し、顔の確認がしにくくなるばかりか、逆光自体に不快さを感じるようになりました。患者がよく訴える「まぶしい」という感覚です。

 照明が少し暗めだと白黒のコントラストが低下し、本や資料が読みづらく感じてもいました。

 毎年、定期的に行われる職場の健康診断の視力検査で、左目の視力が低下傾向にあることが指摘されました。

 自分で自分の目の診察はできないので、ちょうど廊下で出会った麻酔科の女性医師にお手伝いをお願いして、眼科の診察用顕微鏡で私の前眼部を撮影してもらうと、どうでしょう、左の水晶体が濁っている写真が撮れたのです。

 新型コロナ禍で、大学病院や総合病院の眼科では白内障など不要不急とされる手術を見合わせているようです。眼科専門病院である当院では、その必要はなかったのですが、手術希望者が減っていて、このすきに手術をお願いしようと考えました。

 全国的にも名の知られている白内障手術者の一人、徳田芳浩副院長に執刀をお願いし、手術は5月29日と決まりました。

 いつもは医師として通勤している病院に、手術を受ける立場で玄関をくぐると、スタッフがいつもとは違うとびきりの笑顔で迎えてくれました。「感じの良い病院だな」という印象です。

 手術室。いつもなら医師用のロッカー室に直行ですが、今日は患者用準備室へ。担当看護師により体温と血圧が測定されます。目薬を点眼され、手術用帽子とガウンを着用、私個人、手術眼それぞれ確認用のリストバンド装着と準備が進んで、いよいよ穏やかな音楽が流れている手術室に入りました。

 もう少し緊張するかと思っていましたが、意外に冷静です。私の白内障を見つけてくれた麻酔科医師と、顔見知りの看護師が「手を握っていてあげましょうか」と問います。

 「女性に握られたら、ドキドキしちゃうからいいです」と断ったのですが、血圧計の装着、顔面に手術用ドレープ(滅菌カバー)をかけるなどの作業の間、どなたかがずっと手を添えていてくれました。なんとなく心強いものです。

 「照明を見ていてください、水が流れます」と手術者がいい、手術が始まりました。「水」で術野(手術を行っている部分)が満たされたのでしょう、当初、鮮明に見えていた照明の光源がぼやけ、まるで海の底から太陽を見ているようです。機械音と、たまに「少し押されますよ」といった手術者の声。痛みも不快もなく10分ほどで「きれいにできました。終わりです」の声で終了。

 翌朝、眼帯を取ると白黒のコントラストがくっきり見えました。色も一段と鮮明で、感激です。この原稿は同日に書いています。手術者の腕もさることながら、白内障手術の技術進歩には改めて感服です。

 (若倉雅登 井上眼科病院名誉院長)

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若倉雅登(わかくら まさと)

井上眼科病院(東京・御茶ノ水)名誉院長
1949年、東京生まれ。80年、北里大学大学院博士課程修了。北里大学助教授を経て、2002年、井上眼科病院院長。12年4月から同病院名誉院長。NPO法人目と心の健康相談室副理事長。神経眼科、心療眼科を専門として予約診療をしているほか、講演、著作、相談室や患者会などでのボランティア活動でも活躍中。主な著書に「目の異常、そのとき」(人間と歴史社)、「健康は眼にきけ」「絶望からはじまる患者力」「医者で苦労する人、しない人」(以上、春秋社)、「心療眼科医が教える その目の不調は脳が原因」(集英社新書)など多数。明治期の女性医師を描いた「茅花つばな流しの診療所」「蓮花谷話譚れんげだにわたん」(以上、青志社)などの小説もある。

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