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今井一彰「はじめよう上流医療 あいうべ体操で元気な体」

医療・健康・介護のコラム

歯並びは気管支ぜんそくにも関係している!?

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気管支ぜんそくの6歳の女の子の口は…

 ある初冬に6歳の女の子が受診してきました。気管支ぜんそくの治療を受けているのですが、発作の回数を減らしたい、さらに、もし可能なら薬をやめていきたいという思いを持っていました。小学校に上がる前に何とかならないかというのです。

 こんな診察の時に大切になるのが口の状態です。しっかりしゃべれるのか、唇は良く動くかとかも観察が必要です。

慢性的口呼吸 表情筋がうまく使えていない

 「『い~』ってしてみてくれる?」とお願いすると、写真のような「い」の口になりました。唇の開きや歯並びに注目するのも「上流医療」の一環です。もともと乳歯から永久歯に生え替わる時期には「すきっ歯」なのですが(大人の歯は大きいため隙間が必要になります)この子はすきっ歯ではありません。一見すると良い歯並びにも見えるのですが、そうとも言えないのです。そして唇もなんだか、横ではなく上下に広がっています。

 これは慢性的口呼吸の状態で、表情筋などをうまく使えていない可能性が見て取れます。すきっ歯でないことは、 ()(くう) の容積が少ないことにつながります。すぐに鼻づまりを引き起こしたり、鼻炎や中耳炎になったりするのもこのタイプの口に多く見られます。鼻と口は良くも悪くもお互いに影響し合って成長していきます。歯並びがきちんとしていると鼻呼吸もできていることが多いのです。

食事、おしゃべり、「あいうべ」で立派なすきっ歯に

 気管支ぜんそくの治療のためには鼻呼吸を獲得する必要があり、そのためにかみ応えのある食事をしたり、たくさんおしゃべりしたりしてもらいます。そしてもちろん「あいうべ体操」も取り入れてもらいました。

 2か月後に受診したときには、冬にもかかわらず一回もぜんそく発作を起こすことなく、元気に過ごすことができました。

 そして、「『い~』をしてみて」とお願いすると……。

 ごらんのように(写真)、立派なすきっ歯になっていたのです。そして横にキリッと唇を広げることが出来るようになりました。吸入薬の中止は主治医との相談ですが、鼻呼吸ができるようになると、風邪を引いたり、副鼻腔炎を起こしたりということがぐっと減るため、病気で学校を休むことが減ります。

 あいうべ体操などをやる前(写真左)と、2か月やった後(写真右)で、唇の締まりが違うのが分かる

すきっ歯なら「鼻呼吸できている」

 これで元気に小学校に登校できるでしょう。昔は子どもたちのすきっ歯は当たり前でしたが、いまや絶滅危惧種。小さいお子さんのすきっ歯を発見したら「よく発達している」「鼻呼吸できている」と思ってください。私もすきっ歯の子を見ると安心します。

 子どもの時に鼻呼吸の習慣が作られるとその後上気道や気管支系の病気が少なくなるため保護者も本人も楽になります。「この子はアレルギー体質だから」とあきらめずに、その子のアレルギーの「上流」を見直してあげてください。(今井一彰 「みらいクリニック」院長・内科医)

   ※岡山大学病院歯学部スペシャルニーズ歯科診療講師、岡崎好秀先生から助言を賜りました。ありがとうございます。

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今井 一彰(いまい・かずあき)

 みらいクリニック院長、相田歯科耳鼻科内科統括医長

 1995年、山口大学医学部卒、同大学救急医学講座入局。福岡徳洲会病院麻酔科、飯塚病院漢方診療科医長、山口大学総合診療部助手などを経て2006年、博多駅近くに「みらいクリニック」開業。日本東洋医学会認定漢方専門医 、認定NPO法人日本病巣疾患研究会副理事長、日本加圧医療学会理事、息育指導士、日本靴医学会会員。

 健康雑誌や女性誌などに寄稿多数。全国紙、地方紙でも取り組みが紹介される。「ジョブチューン」(TBS系)、「林修の今でしょ!講座」(テレビ朝日系)、「世界一受けたい授業」(日本テレビ系)、「ニュースウオッチ9」(NHK)、「おはよう日本」(同)などテレビやラジオの出演多数。一般から専門家向けまで幅広く講演活動を行い、難しいことを分かりやすく伝える手法は定評がある。

 近著に「足腰が20歳若返る足指のばし」(かんき出版)、「はないきおばけとくちいきおばけ」(PHP研究所)、「ゆびのば姿勢学」(少年写真新聞社)、「なるほど呼吸学」(同)。そのほか、「免疫を高めて病気を治す口の体操『あいうべ』」(マキノ出版)、「鼻呼吸なら薬はいらない」(新潮社)、「加圧トレーニングの理論と実践」(講談社)、「薬を使わずにリウマチを治す5つのステップ」(コスモの本)など多数。

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