文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

スポーツDr.大関のケガを減らして笑顔を増やす

医療・健康・介護のコラム

自粛明けのスポーツ再開時 急に運動量を増やさないで

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う「緊急事態宣言」が5月25日、全面的に解除されました。社会活動の再開には、スポーツ活動も含まれます。しかし、新型コロナウイルスの第2波も想定され、感染防止に気を配りながらの再開になります。自粛生活をしていたスポーツ選手にとって、急に運動を再開することは、けがが発生しやすい状況と言えます。
 今回は大学バスケットボール選手のケースです。

 Aさんは大学2年生のバスケットボール選手です。自粛中、ランニングは行っていましたが、対人で競り合うような練習は一切やっておらず、以前と比べて運動量はかなり減っていました。ある日、体育館でボールに触れる機会がありました。久々だったためか、以前に比べて足が重たく感じており、とうとうドリブルしている際に足がもつれて左肩から地面に落ち、肩を上げることができなくなりました。医療機関で鎖骨骨折と診断されました。

以前と同じ運動量に急に戻さないこと

 しばらく運動量が低下していた場合、思いのほか体力を戻すのは時間がかかります。ランニングを定期的に行っていたとしても、瞬発的な動きやダッシュの動作では筋肉の使い方が異なります。スポーツを再開する時期に、以前と同じ感覚でプレーしていると、思わぬけがをしてしまうことがあります。肉離れ、足関節の捻挫、膝のじん帯損傷、それに野球選手の場合は投球障害肩、野球肘など、挙げればきりがありません。

 練習の再開に当たっては、指導者やチームのキャプテンが中心となり、けがや事故に注意した練習計画をしっかり練る必要があります。

 骨折は通常ギプスなどで固定し、骨が自然につくのを待ちます。しかし、鎖骨はギプスで固定できる部位ではありません。そのため、胸を反るような姿勢を維持できる専用のバンドを巻いて、少しでも骨折部がよい位置でつくように安定させます。

 それでは、Aさんの経過です。

 今後、定期的にX線検査を行い、骨がつくのは2か月ほど後のこととなりそうです。医師からのOKが出たら、バンドを外し、段階的に練習を再開する予定です。

熱中症にも注意

 さまざまな活動を自粛していた間に、気温も高くなってきました。熱中症にも注意する必要があります。感染予防に配慮しながらのスポーツ活動は、誰しも初めてです。本当に手探りの中ですが、感染予防、けが予防、熱中症予防を意識して、スポーツを再開していきましょう。(大関信武 整形外科医)

【スポーツ医学検定のご案内】
 私たちは、スポーツに関わる人に体やけがについての正しい知識を広めて、スポーツによるけがを減らすために、「スポーツ医学検定」を実施しています。スポーツ選手のみでなく、指導者や保護者の方も受けてみませんか(誰でも受検できます)。

 5月に開催予定だった第7回スポーツ医学検定は新型コロナウイルス感染症拡大のため、中止としました。お申し込みをされた皆さまには大変ご迷惑をおかけしました。振り替え受検については改めて案内を差し上げます。また、 ホームページ やSNSでも案内します。本文のイラストや写真の一部は、「スポーツ医学検定公式テキスト」(東洋館出版社)より引用しています。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

oozeki-nobutake_prof

大関 信武(おおぜき のぶたけ)

 整形外科専門医・博士(医学)、読売巨人軍チームドクター、日本スポーツ医学検定機構代表理事、日本スポーツ協会公認スポーツドクター

 1976年大阪府生まれ、2002年滋賀医科大学卒業、14年横浜市立大学大学院修了。15年より東京医科歯科大学勤務。野球、空手、ラグビーを経験。スポーツ指導者などへのスポーツ医学知識の普及を目指して「スポーツ医学検定」(春、秋)を運営している。東京2020オリンピック・パラリンピックでは選手村総合診療所整形外科ドクター。

スポーツDr.大関の「ムーヴ・オン!」はこちら

スポーツDr.大関のケガを減らして笑顔を増やすの一覧を見る

コメントを書く

※コメントは承認制で、リアルタイムでは掲載されません。

※個人情報は書き込まないでください。

必須(20字以内)
必須(20字以内)
必須 (800字以内)

編集方針について

投稿いただいたコメントは、編集スタッフが拝読したうえで掲載させていただきます。リアルタイムでは掲載されません。 掲載したコメントは読売新聞紙面をはじめ、読売新聞社が発行及び、許諾した印刷物、読売新聞オンライン、携帯電話サービスなどに複製・転載する場合があります。

コメントのタイトル・本文は編集スタッフの判断で修正したり、全部、または一部を非掲載とさせていただく場合もあります。

次のようなコメントは非掲載、または削除とさせていただきます。

  • ブログとの関係が認められない場合
  • 特定の個人、組織を誹謗中傷し、名誉を傷つける内容を含む場合
  • 第三者の著作権などを侵害する内容を含む場合
  • 企業や商品の宣伝、販売促進を主な目的とする場合
  • 選挙運動またはこれらに類似する内容を含む場合
  • 特定の団体を宣伝することを主な目的とする場合
  • 事実に反した情報を公開している場合
  • 公序良俗、法令に反した内容の情報を含む場合
  • 個人情報を書き込んだ場合(たとえ匿名であっても関係者が見れば内容を特定できるような、個人情報=氏名・住所・電話番号・職業・メールアドレスなど=を含みます)
  • メールアドレス、他のサイトへリンクがある場合
  • その他、編集スタッフが不適切と判断した場合

編集方針に同意する方のみ投稿ができます。

以上、あらかじめ、ご了承ください。

最新記事