山中龍宏「子どもを守る」
医療・健康・介護のコラム
【番外・ペット編】誤飲事故の8割は犬 えさ状の殺虫剤、チョコレートも危険…猫は容器入り液体に注意!
これまで、子どもの誤飲についてお話ししてきました。実は、乳幼児だけでなく、ペットが誤飲する事故も珍しくありません。現在、15歳未満の子どもは1512万人(2020年)ですが、19年の飼育頭数をみると、犬は879万7000頭、猫は977万8000頭で、わが国では、子どもよりペットの数の方が多いのです。今回は番外編として、ペットの誤飲についてお話ししましょう。
以下は私の経験談です。
今まで、一度も犬を飼ったことはありませんでしたが、生後2か月のゴールデン・レトリバーのオスの子犬を譲り受けることになりました。急きょ、犬の育て方の本を2、3冊買い込みましたが、最初の数ページを読んだだけで、何もわかっていないうちに、我が家に子犬がやってきました。家の中で飼うことにしたその日から、部屋中どこにでもかまわずするオシッコ、ウンチに振り回され、「えさは食べたか」「元気そうか」とチェックするだけでてんてこ舞い。その状況は、初めての赤ちゃんを迎えた家族と同じでした。
生後5か月を過ぎたある日の夕方、皆が忙しくしているときに、子犬はおなかがすいていたのでしょう、台所に入り込み、まな板に飛びついて、みじん切り途中のタマネギを下に落としてしまい、その4分の1個くらいを食べてしまいました。時間外でしたが、あわてて獣医さんに連絡すると、「すぐに連れてきてください」と言われ、胃洗浄をしてもらいました。
タマネギがたくさん出てきました。動物病院の待合室のショーケースには、ペットが飲み込んだものがたくさん陳列してあり、びっくりしました。犬がタマネギを食べると、溶血を起こして死亡することがあるとのこと。そんなことは全く知らず、飼い方の本を読み返してみましたが、タマネギについての注意書きはありませんでした。しかし、「犬は何でもかじりたがり、特に子犬はものをかじるのが大好きです。家事や庭仕事用の化学薬品はすべて犬の手の届かないところに保管してください」と、乳幼児の誤飲への指導とまったく同じことが書かれていました!
犬も猫も0歳と1歳が多く
日本中毒情報センターには、ペットの誤飲に関する問い合わせもあり、06~17年の12年間に寄せられた問い合わせは、犬が5503件、猫が624件でした。06年は1年間に753件ありましたが、以後は減少傾向が見られ、最近では年間に400件前後となっています。犬が8割、猫が1割、その他、ウサギ、鳥、フェレットなどの問い合わせもありました。ペットの年齢分布をみると、犬も猫も0歳と1歳が多く、年齢が上がるにつれて減少していました。
飲み込んだものは、家庭用品が約半数、医薬品が3割を占め、続いて自然毒、農薬、食品などでした。家庭用品の中では殺虫剤が多く、続いて、乾燥剤・鮮度保持剤、保冷剤、保湿剤、 殺鼠 剤の順となっていました。殺虫剤は、ゴキブリ、アリ、ナメクジ、ネズミなどの駆除を目的としたもので、殺虫や殺鼠成分に害虫や害獣が好む誘引成分を加えた、えさタイプの製品となっていて、その代表的なものはホウ酸団子です。これらは、家庭内の床に置かれることが多いため、発生場所は家の中が9割を占めていました。
医薬品としては、使用頻度が高い解熱鎮痛剤の誤飲が多く、「犬がアクセスできるところに置いた」「犬が容易に探せる場所に保管した」「人が服薬時に落とした」などの状況で発生していました。
毒性がある観葉植物に注意
犬や猫は葉をかむことがあり、観葉植物には毒性があるものがあります。自然毒としては、家の中やベランダ、庭にある危険な植物に、ポインセチア、ポトス、ディフェンバキア、アイビー、スパティフィラム、アロエなどがあります。庭の植物では、スズラン、チューリップ、ナンテン、シャクナゲ、キョウチクトウなどが知られています。猫では、ユリによる死亡例があります。
チョコレートは家庭内によくある食品ですが、これに含まれる「テオブロミン」という成分は、犬にはとても危険です。心臓や中枢神経、血管、筋肉などに作用し、 嘔吐 、下痢、体の震えなどの症状が出ることがあります。摂取量が多いと、最悪の場合、死に至ることもあります。その他、コーヒーやココア、キシリトール、レーズン、ピーナッツ、マカダミアナッツなども危険です。これらは絶対に与えないでください。
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