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ココロブルーに効く話 小山文彦

医療・健康・介護のコラム

【Track1】社会活動再開へ。「ポストコロナ時代」の緊張感に備えるコツ

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 日々の暮らしの中で、ふと憂うつな気持ちになった時、「ブルーだ……」と表現することがありますね。そんな「ココロブルー」の状態が長引いて、うつ病などになってしまったら、それは脳の働きに問題が生じた段階、いわば「脳ブルー」の状態です。この連載では、精神科医として、臨床で出合った症例をもとに、ココロブルーのうちに元気を取り戻すための処方箋をご紹介したいと思います。

 私は大の音楽好きでもあります。日々の仕事の傍ら、好きな音楽を聴いたり、作ったり、人前で歌ったりもしています。医師としての経験や知見が、皆さんの心にうまく染みこむことを祈りながら、毎回、ココロブルーへのサプリとして、日々の生活にちょっとした刺激や安らぎを与えてくれそうな「この一曲」もご紹介していこうと思います。

新入社員なのに、自宅待機で不眠に

 今春、地元の女子大を卒業したアイさんは、福祉関連事業所への就職が決まり、新生活への準備を進めていました。ところが、新型コロナウイルスの感染拡大により、3月末からの事前研修やオリエンテーションは全て中止となり、4月7日の緊急事態宣言発令以降、当面の間は自宅待機となりました。友だちづきあいが多く、活動的なアイさんにとって、「思うように動けないこと」は、大きなストレスとなりました。「大学で学んだ高齢者への対応やリハビリに関する知識」を、いよいよ社会で生かせると意気込んでいたのに、肩透かしを食らった心境でした。

 期待感と緊張感で迎えた新年度が予想もしなかった展開となり、自宅での過ごし方もついつい楽な方に流されていきました。同時に、新型コロナの感染不安は、将来への不安にも変わっていきました。もしも、自分が無症候感染者だったら、高齢者が多いあの施設で働けないかもしれない……。

 新社会人にもかかわらず、毎朝の起床時刻は遅くなり、テレビやネットのニュースも、友人との会話もコロナ一辺倒です。外を歩くこともほとんどなく、誰とも会わない毎日。次第に食欲はなくなっていき、体がだるく、夜になっても寝つけない日が10日ほど続きました。スマートフォンに見入る時間が増えたせいか、肩が凝り、頭痛も頻繁になってきました。

 そんなアイさんの様子を心配した看護職の友人にストレス外来を勧められて、4月中旬に私の外来にやってきました。

日常性のピンチは誰にでも来る

 2週間ほど続いた不眠と気分の落ち込み、そして、自身の「現在」を肯定できないアイさんは、すでに脳ブルー、つまりうつ状態でした。思うように動けない自粛の毎日、オンライン以外には仲良しとも会えないことは、誰にとってもストレスになります。

 うつは、誘因なく発症するタイプもありますが、彼女の場合は、睡眠不足がうつの誘因になっていました。原因がはっきりしている以上、睡眠のリズムを取り戻すことで、症状は改善していくはずです。不眠に対する認知行動療法的な指導を進めました。

 彼女の睡眠を妨げてきたことは、過剰な情報による漠然とした新型コロナへの感染不安のほかに、いくつか見つけることができました。「コーヒーや紅茶などのカフェイン飲料を飲む回数が増えた」「起床時間がバラバラ」「屋外の光を浴びていない」「運動不足」……。

 一つ一つ改めていくことを伝え、その上で、ラメルテオン(睡眠‐覚醒リズムの治療薬)を処方しました。そして、「日常性のピンチは誰にでも来ることなのだから、あせらないでいい。必ず回復する」と繰り返し伝えました。

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小山 文彦(こやま・ふみひこ)

 東邦大学医療センター産業精神保健職場復帰支援センター長・教授。広島県出身。1991年、徳島大医学部卒。岡山大病院、独立行政法人労働者健康安全機構などを経て、2016年から現職。著書に「ココロブルーと脳ブルー 知っておきたい科学としてのメンタルヘルス」「精神科医の話の聴き方10のセオリー」などがある。19年にはシンガーソング・ライターとしてアルバム「Young At Heart!」を発表した。

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