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心のアンチエイジング~米寿になって思うこと 塩谷信幸

医療・健康・介護のコラム

新型コロナで浮き彫り、かかりつけ医を持ちたい

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 新型コロナウイルスの感染に関連して、「疑わしければ。かかりつけ医に相談」ということをテレビなどでもよく耳にします。実は我が国では、本来の「かかりつけ医」は“絶滅危惧品種”。僕自身も、熱を出したり、せきが止まらなくなったりした時、どこに行けばいいか途方に暮れるのが正直なところです。若い人たちはかかりつけ医という言葉にはなじみがないでしょう。一方、年配の方たちには内科や整形外科、眼科などいくつもの診療科を受診する方も多いと思いますが、かかりつけ医という意識は持ってない方が多いようです。

すべての診療科に対応できる家庭医

新型コロナで浮き彫り、かかりつけ医を持ちたい

 かかりつけ医とは「健康に関することを何でも相談でき、必要な時は専門の医療機関を紹介してくれる身近にいて頼りになる医師のこと」と医師会では定義しています。

 僕の親父(おやじ)は戦前、戦後を通して内科を開業していましたが、典型的な「かかりつけ医」でした。「家庭医」と言っても良いでしょう。内科といっても風邪や腹痛だけではなく小児科、皮膚科、泌尿器科など、何でも相談に乗っていました。そして、ほとんどの方は家族ぐるみで親父の世話になっていました。両親だけでなく、子供が生まれれば、赤ん坊のときから何かにつけて面倒をみて、成人になれば、その結婚相手まで相談に乗り、話がうまく進めば仲人も務める。従って、家族全体の健康を含め、ライフスタイルもよく把握していたわけです。

 医療の現場では、「病気を診ずに患者を診よ」ということが言われますが、まさにそういう医療を行っていました。でも、今思えば、これは大変な仕事です。自分が医師になって痛感します。たとえ広く浅くであっても、すべての診療科に通じていなければなりません。僕は形成外科という、非常に狭く、偏った分野の専門医なので、そこだけに専念しておればよいので、楽といえば楽でした。

欧米では、医師は家庭医と専門医の2種類

 では、諸外国はどうか? アメリカは社会保障制度が確立されておらず、民間の医療保険会社が医療を費用の面から担っています。そして昔から、医師は、家庭医と専門医の2本立てできています。家庭医がかかりつけ医に当たりますが、アメリカでは「ジェネラル・プラクティショナー」、通称GPと呼ばれ、内科だけではなく、産婦人科、眼科、耳鼻科に関わる全てを一人でカバーします。そして、専門的な診断・治療が必要と判断すると、専門医を紹介します。イギリスではこの2本立てが社会保障制度化され、地域ごとに家庭医がいます。患者はその家庭医を通さなければ専門医にたどり着けません。ドイツや北欧なども、似たような医療制度をとっています。新型コロナ問題で浮き彫りになったのは、心配があった時に相談できる身近な医師の存在です。我が国でも家庭医、かかりつけ医の復活が求められているのです。

日本でも、かかりつけ医を担う「総合診療医」の育成が始まっている

 実は、我が国でも10年ほど前から専門医制度の見直しが始まり、専門分野の一つとして、欧米の家庭医のように、すべての診療科に通じている「総合診療医」の育成が2018年に始まっています。これに「かかりつけ医的」な役割を担わせようということなので、そうした医師が増えていくことが望まれます。

 でも、まだまだ少ないので、当面どうすればよいか? 気軽に相談できる「医師の友達」を持つことです。昔から友にすべきは医師と弁護士というでしょう。でなければ近所の開業医、できれば内科医をかかりつけにすることです。持病があってどこかの病院にかかっているなら、その主治医に相談すること。また、高齢者なら大病院に置かれている「老年病外来」の担当医をかかりつけ医として相談するのもいいでしょう。老年病科は小児科と同じようにある年齢層からの方を、臓器にこだわらずに統合的に見てくれるはずです。いずれにしても、面倒見のいい医師をかかりつけ医にしてください。(塩谷信幸 アンチエイジングネットワーク理事長)

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塩谷信幸(しおや・のぶゆき)

1931年生まれ。東京大学医学部卒業。56年、フルブライト留学生として渡米、オールバニ大学で外科および形成外科の専門医資格を取得。64年に帰国後、東京大学形成外科、横浜市立大学形成外科講師を経て、73年より北里大学形成外科教授。96年より同大学名誉教授。日本形成外科学会名誉会員、日本美容外科学会名誉会員。NPOアンチエイジングネットワーク理事長、日本抗加齢医学会顧問、アンチエイジング医師団代表としてアンチエイジングの啓蒙活動を行っている。

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