文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

ペットと暮らせる特養から 若山三千彦 

医療・健康・介護のコラム

[看取り犬・文福](6)なぜ人の死を見守るのか 殺処分の恐怖体験が原動力?

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

最もつらいのは愛護センター職員

 誤解しないでほしいのですが、私は動物愛護センター(保健所)を悪く言うつもりは全くありません。殺処分も、現状では仕方がないことだと思っています。愛護センターに次々と犬が入ってくる以上、殺処分をしないと犬があふれてしまいますから。私の地元の横須賀市や神奈川県は、ちばわんのようなボランティアの協力を得て、収容された犬たちの譲渡先を見つけることにより、殺処分実質0を実現していますが、それができない地域も多いと思います。

 そして、殺処分をして最もつらいのは、愛護センターの職員さんたちです。さくらの里山科がテレビのニュースで取り上げられた時、文福がいた愛護センターの職員さんが電話をくれました。文福が元気そうでうれしかったと言ってくれたのです。その時、文福がさくらの里山科に来て、もう5年以上がたっていました。だから、愛護センターの職員さんは、6年近く前に、たった6日間世話をしただけの犬を、しかも、その時は文福という名前もついていなかったのに覚えていて、わざわざ電話をくれたのです。これほど犬のことを大切にしている人が殺処分をしなければならないなんて、どんなにつらいことかと思います。私は、犬と猫のためにも、愛護センターの職員のためにも、殺処分0が実現することを祈っています。

入居者にかわいがられる文福

入居者にかわいがられる文福

普段の文福は天真爛漫、陽気な性格

 文福の看取り活動に対する考察から、話が膨らんでしまいました。

 この連載をしている間に、多くの人から、文福がかわいそう、つらくないのかな、さびしいだろうなというコメントを頂きました。私も、文福には申し訳ないという気持ちと感謝の気持ちでいっぱいです。ただ、一つだけ皆さんにご安心いただける材料があります。普段の文福は (てん)(しん)(らん)(まん) 、元気いっぱい。能天気と言ってもいいほど陽気な犬なんです。いつも笑顔です。さくらの里山科のブログには、文福の笑顔がたくさん掲載されていますので、ぜひ見て下さい。

 最後になりますが、ペットが好きな人、犬を愛する人の中には、「嗅覚で察知とか、科学的検証とかの問題じゃないんだ」と考える人も多いかと思います。「犬は素晴らしい力を持っているんだ。それこそが人と犬の絆なんだ。それだけでいいじゃないか」と。いろいろ言いましたが、実は私も同じなんです。犬も猫も、それが好きな人にとっては、大切な伴侶だと思っています。(若山三千彦 特別養護老人ホーム「さくらの里山科」施設長)

3 / 3

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

wakayama_michihiko_bunpuku_200-200

若山 三千彦(わかやま・みちひこ)

 社会福祉法人「心の会」理事長、特別養護老人ホーム「さくらの里 山科」(神奈川県横須賀市)施設長

 1965年、神奈川県生まれ。横浜国立大教育学部卒。筑波大学大学院修了。世界で初めてクローンマウスを実現した実弟・若山照彦を描いたノンフィクション「リアル・クローン」(2000年、小学館)で第6回小学館ノンフィクション大賞・優秀賞を受賞。学校教員を退職後、社会福祉法人「心の会」創立。2012年に設立した「さくらの里 山科」は日本で唯一、ペットの犬や猫と暮らせる特別養護老人ホームとして全国から注目されている。20年6月、著書「看取みといぬ文福ぶんぷく 人の命に寄り添う奇跡のペット物語」(宝島社、1300円税別)が出版された。

ペットと暮らせる特養から 若山三千彦 の一覧を見る

1件 のコメント

コメントを書く

感動しました。

コロ

毎回こちらのコラムに感動しております。 文福の写真、処分寸前の写真の顔と施設で過ごす写真の顔、表情が ぜんぜん違いますね。今現在の表情はとても穏...

毎回こちらのコラムに感動しております。
文福の写真、処分寸前の写真の顔と施設で過ごす写真の顔、表情が
ぜんぜん違いますね。今現在の表情はとても穏やかで、優しい表情です。
文福に見取られる入所者の方も幸せですし、入所者を看取る文福も幸せだと思います。

つづきを読む

違反報告

すべてのコメントを読む

コメントを書く

※コメントは承認制で、リアルタイムでは掲載されません。

※個人情報は書き込まないでください。

必須(20字以内)
必須(20字以内)
必須 (800字以内)

編集方針について

投稿いただいたコメントは、編集スタッフが拝読したうえで掲載させていただきます。リアルタイムでは掲載されません。 掲載したコメントは読売新聞紙面をはじめ、読売新聞社が発行及び、許諾した印刷物、読売新聞オンライン、携帯電話サービスなどに複製・転載する場合があります。

コメントのタイトル・本文は編集スタッフの判断で修正したり、全部、または一部を非掲載とさせていただく場合もあります。

次のようなコメントは非掲載、または削除とさせていただきます。

  • ブログとの関係が認められない場合
  • 特定の個人、組織を誹謗中傷し、名誉を傷つける内容を含む場合
  • 第三者の著作権などを侵害する内容を含む場合
  • 企業や商品の宣伝、販売促進を主な目的とする場合
  • 選挙運動またはこれらに類似する内容を含む場合
  • 特定の団体を宣伝することを主な目的とする場合
  • 事実に反した情報を公開している場合
  • 公序良俗、法令に反した内容の情報を含む場合
  • 個人情報を書き込んだ場合(たとえ匿名であっても関係者が見れば内容を特定できるような、個人情報=氏名・住所・電話番号・職業・メールアドレスなど=を含みます)
  • メールアドレス、他のサイトへリンクがある場合
  • その他、編集スタッフが不適切と判断した場合

編集方針に同意する方のみ投稿ができます。

以上、あらかじめ、ご了承ください。

最新記事