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ペットと暮らせる特養から 若山三千彦 

医療・健康・介護のコラム

[看取り犬・文福](6)なぜ人の死を見守るのか 殺処分の恐怖体験が原動力?

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あわや殺処分 奇跡的に愛護団体に引き取られた文福

 そこで私はもう一つの仮説を立ててみました。二つ目の仮説は、文福が、動物愛護センター(保健所)で死の恐怖を体験したことが、看取り活動をする理由ではないかというものです。

 文福が入っていたのは、地方にある古いタイプの動物愛護センターです。文福がさくらの里山科に来たのは2012年なので、その前年、11年のことです。もう9年も前になります。

 犬たちが収容される部屋は、壁が動くようになっていて、犬たちは1日ごとに隣の部屋へと移されていきます。そして7日目の部屋がガス室です。そこで犬たちは殺処分されることになります。7日以内に引き取り手が現れない犬は殺処分されてしまうのです。

 ここでお断りしておきますが、これはあくまで9年前のことです。現在ではこのようなシステムを取っている動物愛護センターは少ないと聞いています。

 文福はそんな動物愛護センターで6日目の部屋、すなわち殺処分直前の部屋まで行ってしまいました。壁一枚隔てた隣からは、命を絶たれる犬たちの悲痛な叫び声が聞こえてきます。そこで文福は死の恐怖におびえていたのです。

殺処分になる寸前、ひきつった表情の文福

殺処分になる寸前、ひきつった表情の文福

愛護センターで暗くひきつった表情

 愛護センターから文福を譲り受けた動物愛護団体ちばわんが撮影した、当時の文福の写真があります。写真の中で文福の表情は暗くひきつっています。その顔には、言いようもない絶望感が浮かんでいます。

 この時感じた死の恐怖と絶望感こそが、文福が看取り活動を行う原動力ではないかと私は推測しています。

 一人ぼっちで死の恐怖に怯えていた体験があるので、文福は入居者が亡くなることを予測した時、その入居者に寄り添い、一人ぼっちで旅立たせないようにしている。こう書くと、あまりに犬を擬人化し過ぎている、まるでメルヘンだと笑われるのは承知していますが、そう思えてしまうのです。

 私の勝手な仮説が正しいかはわかりませんが、私はそう信じています。

 文福は殺処分の前日に、奇跡的にちばわんに引き取られました。もしその日、ちばわんが文福のいる愛護センターに来ていなかったらと思うと、ぞっとしてしまいます。ちばわんはボランティアで成り立っている組織です。文福も、ボランティアのもとに預けられ、その半年後にさくらの里山科にやってきました。

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若山 三千彦(わかやま・みちひこ)

 社会福祉法人「心の会」理事長、特別養護老人ホーム「さくらの里 山科」(神奈川県横須賀市)施設長

 1965年、神奈川県生まれ。横浜国立大教育学部卒。筑波大学大学院修了。世界で初めてクローンマウスを実現した実弟・若山照彦を描いたノンフィクション「リアル・クローン」(2000年、小学館)で第6回小学館ノンフィクション大賞・優秀賞を受賞。学校教員を退職後、社会福祉法人「心の会」創立。2012年に設立した「さくらの里 山科」は日本で唯一、ペットの犬や猫と暮らせる特別養護老人ホームとして全国から注目されている。20年6月、著書「看取みといぬ文福ぶんぷく 人の命に寄り添う奇跡のペット物語」(宝島社、1300円税別)が出版された。

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1件 のコメント

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毎回こちらのコラムに感動しております。 文福の写真、処分寸前の写真の顔と施設で過ごす写真の顔、表情が ぜんぜん違いますね。今現在の表情はとても穏...

毎回こちらのコラムに感動しております。
文福の写真、処分寸前の写真の顔と施設で過ごす写真の顔、表情が
ぜんぜん違いますね。今現在の表情はとても穏やかで、優しい表情です。
文福に見取られる入所者の方も幸せですし、入所者を看取る文福も幸せだと思います。

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