ペットと暮らせる特養から 若山三千彦
医療・健康・介護のコラム
3万円の給料が払えない! 新型コロナ 障がい者就労支援施設にも深刻な打撃
今回だけは番外編で、特養から話が離れます。
私が経営する社会福祉法人心の会は、知的障がい者の就労支援施設(B型)のあすなろ学苑も経営しています。就労支援施設とは、障がい者の方々が通って、様々な作業をする所です。施設で作業を覚えて、一般企業に就職することを目指すと同時に、施設自体が働く場にもなっています。施設が生産活動や販売を行って収益をあげ、その収益がご利用者様のお給料(なぜか障害福祉の世界では工賃と呼びます)になるからです。
一般のパン屋さんやお弁当屋さんと競って銀賞
障がい者就労支援施設が行っている作業として多いのは、パンや焼き菓子などの食品生産、工業部品の組み立て等の下請け作業、洗濯・清掃等の請負作業、農業生産などです。ワイン造りや和紙作りなど、珍しい活動を行っているところもあります。
このような障がい者施設にも、新型コロナウイルスの 蔓延 は、深刻な打撃を与えています。生産した物を売る場がなくなっているんです。請負作業も激減しています。あすなろ学苑も例外ではありません。
あすなろ学苑は25名の苑生(ご利用者様の呼び名です)さんが通い、パン、焼き菓子、お弁当、ジャム、食べるラー油などの食品生産をしています。皆さんに職人としてのスキルを身に付けてもらうことが狙いですので、手作りの工程を増やしています。手作りのとってもおいしいものが作れています。
2012年には、ファベックス 総菜 ・弁当グランプリという、一般のパン屋さんやお弁当屋さんが競う全国コンテストのパン部門で銀賞を獲得できました。全国から参加したパン屋さん1018軒の中から、上位12組に選ばれたのです! 障がい者施設のコンテストではありません。一般のパン屋さんのコンテストでの成果です。
やはり一般のお菓子屋さんが競う、神奈川県銘菓展菓子コンクールでも奨励賞を受賞しました。地元の横須賀市が主催した横須賀おみやげコンテストでも銀賞を受賞しました。うちの苑生さんたちは頑張っているんです。残念なことに、大きなコンクールは全て銀賞で、1位はとれませんでしたが。
県立高校の売店の運営も委託
横須賀と言えば海軍カレーが有名ですが、あすなろ学苑はその海軍カレーも作っています。海軍カレーと名乗るには、商工会議所の審査に通らないといけないのですが、もちろん通っています。そして横須賀市が主催するカレーフェスティバルに毎年出店しています。1日5千食を売り上げたこともあり、行列ができる模擬店として有名になっています。
また、あすなろ学苑は地元の県立横須賀南高校の売店の運営を委託されています。障がい者施設が公立高校の売店を委託されたのは神奈川県初の快挙でした。
このような努力のかいがあって、あすなろ学苑の苑生さんのお給料は3万円を超えています。
1 / 2
※コメントは承認制で、リアルタイムでは掲載されません。
※個人情報は書き込まないでください。