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田村専門委員の「まるごと医療」

医療・健康・介護のコラム

新型コロナウイルス抗原検査 「陰性の証明」にはなりません

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検査キットを保険適用

新型コロナウイルス抗原検査 陰性確認目的で使用しないで

 新型コロナウイルスの抗原検査キットによる検査が5月13日、保険適用で受けられることが承認された。簡便で迅速に結果が分かる抗原検査を、必要な人に対して行えるようになった意義は大きい。ただし、ウイルスの量が少ない場合には精度が落ちるという限界があり、抗原検査で「陰性」と判定されても、感染していない証明にはならない。国が定めた活用ガイドライン(指針)では、現時点では無症状者に対するスクリーニング目的や陰性確認目的での使用には適さないとして、注意を呼びかけている。

30分で結果判明

 「抗原」とは、ウイルスや細菌、各種のアレルゲンなど体内に侵入して免疫反応を引き起こす物質のことで、抗原に対応して体内で作られるたんぱく質が「抗体」だ。今回承認された新型コロナウイルスの抗原検査キットは、鼻の奥のぬぐい液を採取して、試薬との反応を見る。約30分で結果が分かるとされる。

 従来行われているPCR検査は、少ない量のウイルスでも遺伝子を増幅して調べることで精度の高い診断が行える反面、採取した検体を調べることができる施設が限られることから、運送の手間や検査に時間がかかるのが難点だ。今回の新型コロナウイルス感染では、医師が必要と判断したにもかかわらず、なかなか検査を受けることができない事態が問題となっている。

検査の精度には限界

 これに対し、抗原検査キットは、臨床のその場で結果が分かるのが利点だ。季節性インフルエンザの診断でも同様の抗原検査キットが広く用いられており、医療者にとっても一般の患者にとっても、なじみのある検査法と言える。

 しかし、簡便であることと引き換えに、PCR検査に比べ精度は劣る。添付文書によると、国内臨床検体を用いたPCR検査との比較試験では、陰性一致率は98%だったものの、陽性一致率は37%、行政検査検体を用いた比較では、陰性一致率は100%だったが、陽性一致率は66.7%だった。ウイルスの量が少ないと陽性一致率が低くなる傾向がみられた。

無症状者への使用は推奨せず

 このため、ガイドラインでは、検査キットの使用対象を「医師が、新型コロナウイルス感染症を疑う症状があると判断した人に対して、必要性を認めた時に使用する」とした。そのうえで、検査で陰性と出ても感染していないとは断定できないことから、「確定診断のため、医師の判断においてPCR検査を行う必要がある」としている。

 一方、無症状者が抗原検査キットの検査を受けることは推奨されていない。無症状であっても感染している可能性はゼロではないものの、現時点で確率は低いと想定されることから、「現段階において、使用は推奨されない」とした。院内感染などのクラスター防止のための対応に限っては実施も検討されるとした。

 仮に無症状の人が検査を受けて陰性と出ても、感染していない証明にはならない。確定診断のためにはPCR検査が必要となるが、感染が疑われる症状があって医師が検査を必要と判断した人へのPCR検査を圧迫することにもつながる。また、検査を求めて医療機関を受診したり、検査結果に「安心」して基本的な予防策を怠ったりすれば、かえって感染するリスクを高めることにもなり、むしろマイナスだ。

抗体検査の意味は

 抗体検査についてはどうか。国は東京や大阪などを対象に約1万人規模の抗体検査を6月にも実施する方針を明らかにした。新型コロナウイルス感染によって体内につくられた血液中の抗体(血清抗体)を調べることで、過去に感染したことがあるかどうかが分かる。実際の感染者は現在判明している人数よりもかなり多いとみられており、感染の広がりを把握できることが期待される。

 ただし、新型コロナウイルスの抗体については、まだ不明なことが多い。仮に抗体検査で陽性となっても、どれくらいの量がどれくらいの期間、持続するのか、感染を防ぐ働きなど詳しいことは分かっていない。風疹などのように、検査で十分な抗体を持っていることが分かれば、今後の感染を防ぐ免疫があることを意味するかどうかは不明だ。

 また、抗体検査が陰性であっても、必ずしも感染していないとも限らない。感染して間もない時期で体内に十分な抗体がつくられていなかった可能性もあれば、検査を受けた時点では感染していなくても、その後に感染する可能性もありうるためだ。

 ワクチンの開発や治療薬の探索とともに、抗体の研究や検査法の開発もさらに進んでいくとみられる。研究の進展を期待したい。(田村良彦 読売新聞専門委員)

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田村 良彦(たむら・よしひこ)

 読売新聞東京本社メディア局専門委員。1986年早稲田大学政治経済学部卒、同年読売新聞東京本社入社。97年から編集局医療情報室(現・医療部)で連載「医療ルネサンス」「病院の実力」などを担当。西部本社社会部次長兼編集委員、東京本社編集委員(医療部)などを経て2019年6月から現職。

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