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医療・健康・介護のニュース・解説

欧米では死者が集中…高齢者施設から始まる「医療・介護崩壊」 回避の手立ては

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 介護施設での新型コロナウイルス対策に注目が集まっている。激しい感染拡大がみられた欧米諸国では、数千~数万に及ぶ死者の多くを介護施設の入所者が占めており、日本でも危機感が高まっている。それぞれの施設が人の出入りを厳しく制限し、感染防止を図っているが、ひとたび内部で感染が起きれば、広がりを食い止めるのは難しい。介護施設での集団感染が、地域の医療崩壊を招く恐れも指摘されている。(ヨミドクター 飯田祐子)

続く厳戒態勢…長期化で疲れも

 松山市の特別養護老人ホーム(特養)「味酒野ていれぎ荘」は、3月2日に愛媛県内で最初の新型コロナ感染者が確認されると、当面の面会中止に踏み切った。

 看護師の資格がある窪田里美施設長の指揮で、2月半ばに会議を開き、インフルエンザ対策として以前から行っている感染予防の取り組みと、すでに策定していた感染症流行に対する事業継続計画(BCP)を強化することを決定。県内に感染者が出た段階で面会中止とすることも、その場で決めていた。

欧米では死者多数…高齢者施設から始まる「医療・介護崩壊」 回避の手立ては

漂白剤をしみこませたマットで靴底を消毒

来訪者は全員、玄関で手を洗い、熱を測ってから記帳する

 人の出入りを自動ドアがある正面玄関のみに限定し、配達業者などが玄関で荷物を受け渡す場合も含め、すべての来訪者に、手洗いと消毒、検温のうえ、名前と連絡先などを記入することを求めた。併設のデイサービスでは、1日3回の利用者の検温に加え、担当職員らの特養エリアへの立ち入りを制限した。

 やむを得ない事情で県外に出た職員は、2週間の自宅待機とした。出勤できる職員が減った場合の対応もBCPに盛り込まれており、入所者の食事を人手に余裕がある時間帯にずらしたり、入浴回数を減らして、代わりに体を拭いたりすることになっている。

 日頃の備えと早めの対応で、スムーズに態勢を整えることができたものの、感染防止と入所者の生活の質、職員の負担との間でバランスを取りながらの施設運営は、長期化するほど難しくなってくる。今月14日には愛媛県の緊急事態宣言が解除されたが、当日に市内の病院で、患者・職員19人におよぶ集団感染が明らかになり、なかなか先が見えない。

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防護服の代用としてごみ袋で作ったガウン

 窪田施設長は、「マスクやアルコールはまだ不足気味で、ゴーグル、防護服はもともと置いていません。防護服の代わりにと、ごみ袋をつなぎ合わせたものを職員が作ってくれていますが、実際に感染者が出たら、すぐに使い果たしてしまうでしょう。濃厚接触者として自宅待機する職員に加え、感染を恐れて出勤を控えたいという職員も出てくることを考えると、不安は尽きない」と話す。

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