文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

知りたい!

医療・健康・介護のニュース・解説

欧米では死者が集中…高齢者施設から始まる「医療・介護崩壊」 回避の手立ては

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

入院できない感染者を内部で隔離 「籠城するしか…」

 介護施設に入所する人の多くが、様々な疾患を抱えている。こうした重症化しやすい高齢者が集団生活を送るリスクの高さは、当初から指摘されていた。

 食事や排せつの介助では、職員と高齢者が密着するため、「人の接触は、病院よりも多い」という指摘もある。認知症の人が歩き回ったり、マスクをいやがって外してしまうといった特有の事情があることに加え、特養や老人保健施設(老健)などの大規模な施設では、今も4人前後の相部屋が多く残っていることなども対応を難しくしている。

 軽症の患者が急変して亡くなる例も相次ぐ中、感染者の入院先が見つからず、施設内にとどまらざるを得ない場合もある。全国老人保健施設協会が先月28日に記者会見を開き、千葉県松戸市や福岡市などの複数の施設で、保健所などの指示により、検査で陽性と判定された人を隔離してケアを続けていることを明らかにした。同協会の平川博之副会長は、「老健には医師がいるが、肺炎を治療する設備はない。感染拡大を防ぐため、他施設からの応援職員を入れることもできず、 籠城(ろうじょう) するしかない」と苦境を訴え、患者の速やかな入院受け入れを求めた。

欧米では、感染死の多数が介護施設で

 日本より先に激しい感染拡大がみられた国では、介護施設で膨大な数の死者が出ている。

 英ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの研究チームが4月26日に発表した報告書によると、新型コロナの死者に占める介護施設の入所者の割合は、フランスで51%、ノルウェーで63%、カナダでは72%に上る。

 イタリアでは、一つの介護施設で100人が亡くなったケースも。スペインでは、施設内に入所者と遺体を放置したまま職員が逃げ出すなど、悲惨な状況が報じられている。

 世界で最も多くの人が亡くなっている米国でも、同様の状況だ。ニューヨークタイムズ紙(5月10日付電子版)によると、同社の分析では、米国内の老人ホームの死者は少なくとも2万5600人に上り、全体の3分の1を超えていた。

 「介護崩壊」の危機に直面したケースは、日本にもある。

 富山市の老健「富山リハビリテーションホーム」では、4月17日に入所者の感染が明らかになって以降、連日のように感染者数が膨らんでいった。富山市のこれまでの発表では、職員を含む58人の感染が確認され、うち8人が亡くなった。

 看護師や介護職員の感染、自宅待機で手が回らなくなり、一時は入所者の生活を維持するのも難しい状況に陥ったという。周辺の病院では、介護が必要な高齢者の受け入れ態勢がなく、現在も施設内で療養している患者がいる。

2 / 3

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

知りたい!の一覧を見る

最新記事