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円形脱毛症 症状は様々…気づいたら すぐ皮膚科
円形脱毛症は、コイン形の脱毛部が頭に一つだけできるというケースにとどまらない。同時にたくさんできて急に広がったり、全身の体毛が抜け落ちたりする場合もあり、症状は様々だ。治りにくいことも多く、とても厄介だ。(矢沢寛茂)
人口の1~2%
円形脱毛症は、体に侵入した病原体を攻撃する免疫細胞の一種「リンパ球」が、毛の根元(毛根)を誤って攻撃してしまうことで発症する。攻撃を受けた毛根が消失したり、生えてくる毛がやせ細って切れたりしてしまう。なぜこうした異常が起きるのか、まだ詳しく解明されていない。
患者は、性別や年齢にかかわらず、人口の1~2%の割合で出るとされる。〈1〉脱毛部が1か所だけできる「単発型」〈2〉みるみる広がったり、2個以上できたりする「多発型」〈3〉生え際が帯状に抜ける「蛇行型」〈4〉頭全体の毛が抜ける「全頭型」――が主なタイプだ。
髪の毛に限らず、眉毛、まつげ、ひげ、わき毛など、あらゆる体毛で起こる。大阪大寄付講座准教授の寺尾美香さんは、「この病気は、外見や印象を大きく変えてしまいます。『髪より眉の脱毛が気になる』という男性もいます」と説明する。異常に気づいたら、すぐに皮膚科を受診する。
診察では、頭皮や毛の状態を専用の拡大鏡でチェックする。ちぎれた毛や、毛根だけ残った黒い点が見つかれば、進行中の状態だ。毛を引っ張るテストをし、抜けやすさを確かめる。
単発型であったり、多発型でも数が少なかったりする軽症の場合は、免疫反応を抑えるステロイド剤を塗ったり、局所注射をしたりする。発症してから早い時期ならば、十分な回復が期待できる。
広い脱毛部が半年以上も治らない重症者は、ステロイドの塗り薬のほか、「局所免疫療法」も検討する。皮膚に弱いかぶれを起こす特殊な薬品を塗って発毛を促す。この薬品は保険適用外だ。原則、ステロイドの塗り薬とは併用しない。
その他、状況に応じてステロイドを服用したり、点滴で投与したりする治療法が選択されることもある。
ストレスより遺伝
円形脱毛症は、一般的にストレスが原因と考えられてきたが、近年、あまり関連性がないことがわかってきた。遺伝が関わっているとみられ、血縁者に患者がいる人は発症しやすいことが明らかになっている。効果的な予防法はなく、洗髪やブラッシング、食事などに注意を払っても、回復や再発予防は期待できない。
いったん治っても、患者の半数近くで再発する。インフルエンザや肺炎などの感染症を患った後に発症することも多く、予防のため、こまめな手洗いを心がける。過度の疲労やけが、出産後も注意が必要だ。
円形脱毛症は、甲状腺の病気や、皮膚の一部の色素が抜けて白くなる「尋常性白斑」、関節リウマチなどを合併することも知られている。これらの病気にも十分注意が必要だ。
寺尾さんは、「回復しにくい場合、精神的苦痛を拭うのは簡単ではありませんが、あまり思い詰めないことも大切。ウィッグ(かつら)や帽子なども上手に活用しましょう」と話している。
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