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前立腺がんの治療…進行見極め手術回避も

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 前立腺がんは、多くの場合、進行が遅い。このため、体への負担が大きい手術や放射線などによる治療をなるべく回避し、定期的に検査をしながら経過を見守る治療が行われている。(利根川昌紀)

前立腺がんの治療…進行見極め手術回避も

 前立腺は、男性にしかない臓器で、精液の一部を作っている。年間約9万人が診断され、患者は今後も増えると予想されている。

 がんを早期に見つけるのに役立つのが検査だ。代表的なのが、採血で行うPSA検査。がんができると、前立腺で作られるPSAというたんぱく質が血液中に漏れるとされる。その量を測り、がんの疑いがあるかどうかを調べる。基準値上限(4ナノ・グラム/ミリ・リットル)を上回ると、前立腺がんを疑う。

  「様子見」も選択肢

 日本泌尿器科学会理事長の大家基嗣さん(慶応大泌尿器科教授)は「前立腺がんの患者は50歳以上の人が多い。このくらいの年齢になったらPSA検査を受けてほしい」と話す。

 確定診断をするには、「前立腺生検」という検査が必要だ。超音波画像を見ながら10~12か所、細い針を刺して組織を採取する。がんが見つかったら、進行しやすいタイプかどうかなども調べ、治療方針を決める。

 進行が緩やかである可能性が高い場合、積極的な治療は実施しない。定期的にPSA検査などをしながら、様子をみる「監視療法」が選択肢となる。

 10年ほど前に前立腺がんと診断された香川県の男性(72)は、3か月ごとにPSA検査を受け、今も様子をみている。「不安になることもありますが、特別な治療はしていません。症状もなく、病気のことを忘れるほどで、気持ちは安定しています」と話す。

 大家さんは「手術をすると一時的に尿漏れが起きるなど、生活の質が低下します。がんの進行具合をチェックしながら、治療の開始を先延ばしできるメリットは大きい」と説明する。

 ただ、PSA検査で異常値になっても、がんが見つからなかったり、治療の必要がないがんが見つかったりする。がん検診のあり方を議論する厚生労働省の検討会が今春まとめた「中間整理」では、がんはできていないのに、あるかもしれないと診断される「偽陽性」などの不利益が、死亡率を減少させるという利益を上回る可能性が否定できないとした。

  検査精度 向上へ

 泌尿器科医で黒沢病院(群馬県高崎市)院長の伊藤 一人かずと さんは「過剰診断につながることは事実だが、治療が必要ながんが見つかることも多い。PSAの数値の上がり方などを見極めることは、より適切な診断や治療方針を決めるのに有用です」と指摘する。

 新たな検査を実施する試みも始まっている。一部の医療機関では、磁気共鳴画像(MRI)を使い、生検を実施している。がんの位置をより正確に把握することができる。

 また、PSA検査の精度をより高めた新技術も開発されている。不必要な生検を今より減らせると期待でき、今後、実用化されれば、医療現場で導入が進むと予想される。

 伊藤さんは「診断の精度が高まることで、より良い治療を選択することにもつながります」と話している。

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