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ピック病(認知症)介護『父と私の事件簿』

介護・シニア

[コロナ編]「スーパーで距離がとれない」「マスクを外す」…認知症の父 コロナで介護サービス縮小「どうすればいいの?」

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 「悪いんだけど、通所の回数を今までの半分にしてくれる?」

 恐れていたその電話が、ケアマネさんからかかってきたのは、オリンピックの延期が決まり、東京で新型コロナウイルスの感染者が激増した3月後半のことであった。

 神奈川の感染者も増え、父が通所している、看護小規模多機能居宅介護の事業所いわく、「うちも事業所として、上からの指導に基づいて感染防止を強化しないといけなくなったの。そのため、人と人の距離をとるので、事業所の中の人数をいつもの半分に抑えることになったの」。

 しょうがない。そのお達しは文句を言えることではなく、言ったところで変わるものではない。しかも、感染したら命が危ない高齢者が集まるデイサービスを、この状況下で稼働させることは、事業所にとっても綱渡りの気分だろうし、サービスがなくならないだけでもありがたい。

ルーチンが壊れてイライラが…

 が、正直、参った。

 父は認知症であり、メインの症状は「ピック病」。その病に特有の「時計的行動」をする症状にあわせ、日々をルーチン化することで、なんとか、ある程度落ち着いた生活ができているのだ。そのルーチンが壊れることで、歯車が狂い、認知症が進んでしまうのではないか? しかも、毎日1回、デイサービスの職員と一緒にスーパーで買い物をすることは、父にとって必須なので、それがないとイライラして暴力的になったり、妙な行動をしたり、一人で行こうと脱走する危険がある。いくらこの状況下で取材ができず、ライターの仕事が減っている私といえども、ずっと父を見ていることはできない。私の負担が増え、イライラ大爆発になることが、自分でも容易に想像できる。

 そこで、「通所の無理な日は、買い物同行だけお願いできないでしょうか」と頼み込み、なんとか数回は受けてもらった。家から歩いて行けるスーパーに私が連れていくと、また自分一人で行こうとする可能性があるので、車で遠くの店に連れて行ってもらうしかないのだ。

マスクは5分と着けていられず

 さて、通所が半減の日々が始まり、まず、困ったのが、父はマスクをしていることができないこと。今まではそれでも通所できたが、フェーズが変わったことで、必ずマスクをして、通所先で過ごさないといけなくなった。が、父は5分と着けていられない。家を出る時に、きちんと着けても、送迎の車の中でさっそくはずしてしまう。スタッフさんに注意され、着け直しても、小規模多機能の事業所に着くと、またはずす。スタッフさんに2度、3度と注意されるたびに父はイライラし、しまいにはスタッフさんの手をはらいのけ、大声を出してしまうそうだ。また、市の指導通り、「密」をさけるため、事業所内は人数を減らしただけでなく、換気をまめにしないといけない。すでに春なので、大きな窓をスタッフさんが開けるのだが、父は「寒い」と言ってスタッフさんについて歩き、開けるそばから、閉めて迷惑をかけているとか。

 そんな注意を受けるたびに、「は~」とためいきが出る。ただでさえ父が家にいる時間が増え、食事の準備をする回数も増えるなど負担は倍増。最近、特にストップがきかなくなっている父が、しじゅう変なことをしないか見なくてはならず、私もすでにイライラしている。

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田中亜紀子(たなか・あきこ)
 1963年神奈川県鎌倉市生まれ。日本女子大学文学部国文学科卒業後、OLを経て、ライター。女性のライフスタイルや、仕事について取材・執筆。女性誌・総合誌などでは、芸能人・文化人のロングインタビューなども手がける。著書に「満足できない女たち アラフォーは何を求めているのか」(PHP新書)、「39.9歳お気楽シングル終焉記」(WAVE出版)。

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