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田村専門委員の「まるごと医療」

医療・健康・介護のコラム

新型コロナ 介護崩壊を防ぐには

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社会的孤立の拡大、孤独死のリスク

 介護サービスが縮小してしまうと、高齢者は歩く機能や栄養状態、認知症などの悪化が心配されるほか、介護サービスだけが社会との大切なつながりになっている独居高齢者などでは、社会的孤立や孤独死などのリスクも高まる。家族にとっても、介護の負担が増大することの影響は大きい。

 また事業所側にとっては、経営悪化の危機も迫ってくる。介護保険による収入は手続き上、翌々月末になるため、利用者減による収入減の影響は、6、7月以降に顕在化するのではという。

 この状況が続くと、最悪のシナリオとして、地域の高齢者が必要な介護を受けられない介護崩壊を招く恐れがある。国も次々に対応策についての事務連絡を出すなどしているが、現場では消化し切れていない状況もあるという。高野氏は「新型コロナウイルスで何より心配なのは、人々の距離を遠ざけ孤立の拡大を招くこと」などとして、医療と表裏一体である介護の重要性を強調した。

介護保険20年の節目に

 2000年度に介護保険制度がスタートして20年。高齢化の進展によるサービスの需要が高まる一方で、制度開始当初から課題になっている人手不足の問題は一向に改善されない。

 冒頭の介護支援専門員は手紙で、制度創設時に働き盛りだった人たちが、年齢的に無理が利かなくなる一方で、新しい人材はほとんど入ってこず、新しい施設ができても乏しい人材を奪い合うだけという現状を説明した。制度を維持するためには給与水準を上げるしかなく、税投入の割合を増やすことや利用者の応能負担化などの改革が必要だという。「介護の仕事は結局、人」と訴える。

 介護保険に詳しい三原岳・ニッセイ基礎研究所主任研究員は「介護は医療に比べて業界団体の力が弱く、現場の声が政策決定過程に反映されにくいことや、介護行政の中心は市町村なので、医療の対応に忙殺されている都道府県の手が回っていない可能性もあるかもしれない」と話す。

 そのうえで、「マスクや感染防護服などの配分や、限度額を含む介護報酬の引き上げなどが必要だ。介護施設でも認知症の人の症状が悪化する可能性があり、シールドで間仕切りした面談ルームの設置など、飛沫(ひまつ)感染に配慮した面会方法の工夫なども求められる。ただ、オンラインでの対応には限界があり、『通いの場』を増やして介護予防に取り組むという国の戦術は、今後再考を余儀なくされそうだ」としている。 (田村良彦 読売新聞専門委員)

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田村 良彦(たむら・よしひこ)

 読売新聞東京本社メディア局専門委員。1986年早稲田大学政治経済学部卒、同年読売新聞東京本社入社。97年から編集局医療情報室(現・医療部)で連載「医療ルネサンス」「病院の実力」などを担当。西部本社社会部次長兼編集委員、東京本社編集委員(医療部)などを経て2019年6月から現職。

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介護の現状

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私は、介護福祉士で通所介護施設に勤務しています。1日約20人前後の方々が通っています。同じ室内で何時間も一緒に過ごします。施設内では消毒や手洗い...

私は、介護福祉士で通所介護施設に勤務しています。1日約20人前後の方々が通っています。同じ室内で何時間も一緒に過ごします。施設内では消毒や手洗いなどの声かけを行い、マスク着用をお願いしています。がマスクを外してしまう方が多く、家族さんは着けてほしいというのですが、認知症などの症状もあり難しい状態です。マスクをしまってしまったり、自分のではないと言われるかたもいて困っています。私の家には一歳半になるこがいます。まだ言葉も話せないので、熱が出たりするとすぐ保育園から連絡があり帰され、熱が下がっても、24時間たってからの登園になりますと言われました。子供を1人でおいては行けず休まざるおえません。学校が休校になり、人がいないのに休まないと行けない。でも、もし自分の子供が感染していたらと思うと怖くて、仕事にも行けません。休んだ分の収入は減り、食費や医療費がかさみます。介護職の補償も考えて欲しいです。会社に支援金を出しても、私たちには中々届きません。現場で働いてる人が不安なく働けるような支援をお願いします。

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