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アラサー目前! 自閉症の息子と父の備忘録 梅崎正直

医療・健康・介護のコラム

弟が兄を追い越してしまうのが怖かった頃…次男と僕のフクザツな話

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 長男の洋介と次男とは2歳違い。洋介が3歳で医師から自閉症だと告げられたとき、次男はちょうど初めての誕生日を迎えたころだった。精神科医の話を聞く間、妻に抱っこされてむずかっていたのだが、それを見た医師に、

 「今に、この子が追い抜いてしまいますよ」

と言われたことは、初回のコラムに書いた。

 医師としては、わが子の問題に対し、あまりに感度が鈍い両親の目を覚まさせようとした一言だったのかもしれない。しかし、僕らにとっては、とても残酷な言葉だった。

イラスト:森谷満美子

イラスト:森谷満美子

永遠に来てほしくなかった「その日」

 透明な壁に阻まれるかのように、言葉の発達が止まってしまった洋介。それに比べ、次男の成長は順調だった。洋介のときは、寝返りをうつのも、ハイハイするのも、親がありとあらゆる手を使って助けなければならなかった(結局、ハイハイはできなかった)。それが、次男に関しては、いつできるようになったのか記憶にないくらいだ。

 今振り返れば、医師の言葉の通りになるのは時間の問題だった。しかし、まだ洋介の障害について受け入れられなかった僕は、その日が永遠に来てほしくないと思っていた。

 そして、次男がすくすくと成長していくのを見て、うれしく思う反面、どこかで恐怖心を抱くようになってしまっていた。同じおもちゃで遊んでいる3歳の洋介と1歳の次男を眺め、ある時、「2人とも、このまま大きくならなければいいのに……」と考えている自分に気づいた。

いつの間にか立場が逆転し

 障害のある人のきょうだいが、成長するにつれて様々な葛藤を抱えることは、よく指摘されている。きょうだいへの心理的なサポートが必要な場合もある。現在、洋介が通っている福祉事業所でも、保護者から「きょうだいが集い、支え合える場を」という要望が上がっているところだ。わが次男も、多かれ少なかれ、障害のある兄がいることに、強い影響を受けてきたように思う。

 なんとなく、立場が逆転したのは、ともに同じ幼稚園に通っていた頃だろうか。しばらく前までは、スーパーなどで次男が迷子にならないよう、洋介に手をつながせていた。それが幼稚園では、“失踪”した洋介を先生たちが焦って探しているところへ、次男が洋介の手を引いて現れたこともあったそうだ。

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梅崎正直(うめざき・まさなお)

ヨミドクター編集長
 1966年、北九州市生まれ。90年入社。その年、信州大学病院で始まった生体肝移植手術の取材を担当。95年、週刊読売編集部に移り、13年にわたって雑誌編集に携わった。社会保障部、生活教育部(大阪本社)などを経て、2017年からヨミドクター。

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1件 のコメント

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発達障害を持つ集団に限らない話

寺田次郎 関西医大放射線科不名誉享受

自閉症スペクトラム関係なしに、根深い問題ですね。 兄弟姉妹、先輩後輩、同級生の優劣や差異。 あくまで、発達の順序や能力や技能の到達度は個性もバラ...

自閉症スペクトラム関係なしに、根深い問題ですね。
兄弟姉妹、先輩後輩、同級生の優劣や差異。
あくまで、発達の順序や能力や技能の到達度は個性もバラバラです。

20-30歳前後で様々な振り分けが行われる世の中において、競争や揉め事は世の常ですが、一方で、そこに捉われ過ぎるとかえって不幸になります。
発達障害の子供は極端な例で、本当は社会の構成や意見とか感情とかの調整能力を問われている気もします。
特定の価値観や承認欲求に過度に依存する危険性とも言えますけど。

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