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Dr.若倉の目の癒やし相談室 若倉雅登

医療・健康・介護のコラム

たかが翼状片、されど翼状片…志和利彦医師に聞く

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たかが翼状片、されど翼状片…志和利彦医師に聞く

  翼状片(よくじょうへん) という病気があります。これは角膜(黒目の表面)に結膜(白目の表面を覆う半透明膜)組織が三角状( (つばさ) の先端の様)に、主に鼻側から入り込んでくる原因不明の病気です(写真上)。まれには大きくなって視力に影響することがありますが、「片」の文字どおり、入り込む部分は通常小さく、ものの見え方には影響が出ません。ただ、入り込んだ部分が盛り上がり、付近の充血が目立つので見栄えのよくない外見になり、気になるのです。

 多数例の翼状片を手術している元日本医科大学診療教授、志和利彦さんにお話を伺いました。

若倉  先生は翼状片手術数が日本で最多だといわれますが、そうなったきっかけは何ですか?

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志和  1989年、岩手県県北の県立久慈病院に赴任しました。久慈市周辺の主産業は漁業で、約4万人の医療圏に眼科医は私一人だけでした。大学勤務時代は少なかった翼状片患者がとても多いのに驚きました。角膜乱視で視力が低下していた例もありました。日本医大に異動するまでの11年余りの間に3000例の手術をしました。

若倉  医療圏人口の15人に1人以上の計算ですね、それはすごく多い。紫外線や海風が強い土地柄なのでしょうね。私もかつては手術をしていましたが、再発が多いという印象があります。

志和  単純切除だと50%再発するとされています。私は「遊離弁移植」といって、翼状片切除後、上方の健常な結膜を遊離して移植する方法をとります。そして、多くは外見をよくしたい審美的な目的ですから、出血の少ないきれいな手術を心がけています。すると、再発は1%以内です。

若倉  再発防止にマイトマイシンCという腫瘍の増殖を抑制する注射薬を利用する日本独自の方略があり、私も使っていました。先生のお考えは?

志和  マイトマイシンで一番困るのは強膜(白目)を溶かしてしまう強膜軟化症という副作用で、この薬は本来なら使いたくないです。しかし、再発例など、やむを得ない難治例には私も使います。

若倉  手術で翼状片が消失した患者さんは、とても感激します(写真下)。でも、保険の点数は低いですよね。

志和  丁寧できれいな手術をしようとすれば30分から、再発例では1時間はかかります。でも、保険点数はどんどん下がっているので、眼科医の多くは手術をしたがりません(笑)。

若倉  それでも、この手術をし続けておられる先生の姿勢はどこから来るのでしょう。

志和  私の出身高校の先輩でもある宮沢賢治が「全世界の人々が幸せにならなければ、わたくし個人の幸せはありえない」と言っています。私自身がいろいろな病気で手術を受けてきた体験もあり、私の手術で一人でも多くの病める人がハッピーになってほしいと思っています。でも、当然、一人で助けられる人数には限りがあり、すべての病が治しきれるものでもありません。保険制度に由来する問題、医療スタッフが多数必要な現代医療システムなど、今日の医療にはさまざまな問題があります。しかし、そういうこととは無関係に良医や研究者が出てくることが大切です。そのためにも、卒前卒後の医学教育や医療制度が見直され、将来の日本の医療が好転することを願っています。

 (若倉雅登 井上眼科病院名誉院長)

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若倉雅登(わかくら まさと)

井上眼科病院(東京・御茶ノ水)名誉院長
1949年、東京生まれ。80年、北里大学大学院博士課程修了。北里大学助教授を経て、2002年、井上眼科病院院長。12年4月から同病院名誉院長。NPO法人目と心の健康相談室副理事長。神経眼科、心療眼科を専門として予約診療をしているほか、講演、著作、相談室や患者会などでのボランティア活動でも活躍中。主な著書に「目の異常、そのとき」(人間と歴史社)、「健康は眼にきけ」「絶望からはじまる患者力」「医者で苦労する人、しない人」(以上、春秋社)、「心療眼科医が教える その目の不調は脳が原因」(集英社新書)など多数。明治期の女性医師を描いた「茅花つばな流しの診療所」「蓮花谷話譚れんげだにわたん」(以上、青志社)などの小説もある。

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