本ヨミドク堂
医療・健康・介護のコラム
『お父さんは認知症~父と娘の事件簿』 田中亜紀子著
「病院で診てもらおう」と言う娘に、父は、こぶしを振りかざして、殴りかかってきた。かつては小学校の校長も務め、穏やかな教育者だった父が……。
80代の父と同居するバブル世代のシングル娘。現代の日本ではどこにでもいそうな、この親子に降りかかったのは父の認知症、そのなかでも、理性的行動がとれず、粗暴になりがちな「ピック病」という病だった。この聞きなれぬ名の病気を発症した父による奇行と大小のトラブルに振り回される娘の、乱と奮闘の日々をつづる。2019年3月から7月にかけて連載したコラム「 ピック病(認知症)介護『父と私の事件簿』 」に加筆し、刊行。
介護生活のなかで起きた、ある夏の日の“惨劇”には、読んでゾッとさせられるが、少子高齢化の今では、「誰にいつ起きてもおかしくない」と思わなければいけない。
「父娘だからこそ」の歯に 衣 着せぬやりとりからは、愛着と愛情も垣間見える。認知症介護の厳しい現実に、ユーモアと希望をまぶした一冊。
(中公新書ラクレ 800円、税別)
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