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肝がんが高齢者、先進国で増加傾向

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 世界疾病負担研究(GBD)2017のデータを用いて、1990~2017年の世界における原発性肝がん(以下、肝がん)の発生動向を解析した結果、30歳未満では主にB型肝炎ワクチンの効果により男女とも減少傾向にある一方、60歳以上の男性では増加傾向にあることが示された。中国・復旦大学のZhenqiu Liu氏らがCancer( 2020年3月23日オンライン版 )に発表した。

30歳未満では減少傾向

肝がんが高齢者、先進国で増加傾向

(C)Getty Images ※画像はイメージです

 2018年の世界の肝がん新規発症は84万1,000例、肝がん死は78万2,000例で、肝がんは診断数ががん全体の第6位、死亡数ががん関連死の第4位を占める。肝がん診断時の平均年齢は約60歳だが、若年~中年層の患者もまれではなく高齢の患者に比べて疾病負担が大きくなる。

 そこでLiu氏らは、GBD2017のデータを用いて1990~2017年の195カ国・地域における肝がんの発生動向を診断時の年齢、性、地域、原因別に解析した。

 その結果、世界全体では1990~2017年に診断時30歳未満の肝がん患者は1万7,381例から1万4,661例に減少したことが判明。

 同期間の肝がんの年齢標準化発生率(ASR)は、診断時30歳未満で男女とも低下。診断時30歳未満の男性で人口10万対0.74→0.52〔推定年変化率(EAPC)-2.63、95%CI -3.20~-2.06〕、女性で0.42→0.25(同-2.62、-2.98~-2.25)に低下した。

 一方、同期間に診断時30~59歳の肝がん患者数は21万6,561例から35万9,770例に増加した。ASRは診断時30~59歳の男性では人口10万対20.48→20.04(同-0.49、-0.65~-0.33)、女性で6.88→5.01(同-1.52、-1.69~-1.35)に低下した。

 1990~2017年に診断時60歳以上の患者は24万1,189例から57万8,344例に増加していた。同期間の診断時60歳以上のASRは、男性で人口10万対68.27→86.91に上昇(EAPC 0.64、95%CI 0.52~0.75)、女性では横ばい状態(同-0.06、-0.14~0.03)であった。

 若年層における肝がんの減少は、B型肝炎ワクチンによるところが大きかった。1990~2017年のB型肝炎による肝がんのASRは、診断時年齢30歳未満の男性で人口10万対0.58→0.39(EAPC-2.91、95%CI-3.52~-2.30)、女性で0.28→0.15(同-3.07、-3.48~-2.30)に低下。診断時年齢30~59歳の男性で人口10万対12.42→11.66(同-0.74、-0.95~-0.54)、女性で3.41→2.26(同-1.93、-2.12~-1.72)に低下した。また、B型肝炎による肝がんは大半の地域で減少していた。

 肝がんは、先進国の多くで年齢および性を問わず増加していた。ただし、日本では診断時年齢を問わず減少傾向にある。

NAFLDによる肝がんが全地域で最大増加

 性別の検討では、男性は女性に比べて診断時60歳以上の患者が劇的に増加しており、診断時30~59歳の患者の減少幅が小さかった。

 原因別の解析では、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)に起因する肝がんがほぼ全地域で最も大幅に増加していた。

 研究責任者で同大学のXingdong Chen氏は「現在の肝がん予防の取り組みは高齢者に対する注意が欠けており、肥満が肝がんの危険因子として問題になっていることが明らかになった。先進国と発展途上国の双方において、肝がん予防戦略の調整・見直しを図るべきだ」と述べている。(太田敦子)

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