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気象予報士ママの「健康注意報」 新見千雅

医療・健康・介護のコラム

麻疹に注意

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1歳になったらすぐにMR(麻疹・風疹)ワクチンを

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 さて、MR(麻疹・風疹)ワクチンの接種は、1歳代で1回、小学校入学の前年に1回の計2回行います。この2回の接種は、とても重要です。一刻も早くワクチンを打たなければいけないと思うママもいらっしゃるかもしれませんが、何らかの理由で0歳児でワクチンを受けても、母親からの抗体が残っていると、免疫を十分に得ることができない可能性があります。そのため、現在のスケジュールでは1歳時に第1期の接種があります。生まれてから6か月頃までは、母親からの抗体によって麻疹の感染を防ぐことが期待できます。とはいえ、0歳で麻疹に感染してしまうこともあります。生後6か月頃からは母親の抗体が消失していき、1歳半頃までは免疫力がとても低いと言われているので、日頃から体調に変化がないかを観察した方がよいでしょう。人混みを避けたり、手洗いをしたりするなどして、赤ちゃんをウイルスや細菌から遠ざけることが大切です。

 しかし、1歳にならないと絶対にワクチン接種が受けられないわけではありません。

 もし麻疹の感染者が身近にいたなど、0歳で麻疹に感染したかもしれないと思った時は、すぐに主治医の先生に相談するといいでしょう。麻疹感染者に接触後72時間以内に、緊急的にワクチン接種を受けると、症状を軽減できる可能性があります。ただし、受診の際には、発熱、発疹、結膜の充血、頬の裏側の白いコプリック斑などの症状が出現しているかを確認してみましょう。症状があれば、直接医療機関を受診するのではなく、電話で連絡してから、なるべく公共交通機関を使わないで受診するようにしてくださいね。

大人も麻疹の抗体があるかチェック

 赤ちゃんの免疫を作るのは、とても大切ですね。でも、ママやパパは、自分が麻疹の抗体を持っているかを知っているのでしょうか? 実は、昨年の麻疹の小流行で多く報告されたのは20代から30代の大人です。大人も、今までに麻疹にかかったことがなく、自分自身の予防接種が2回未満なら免疫が十分でない可能性があります。まずは、ご自身の母子手帳などで確認してみるのもいいでしょう。

 麻疹のワクチンが2回接種になったのは2006年以降です。それより以前の1978年~2005年にかけては1回の定期接種でした。08年から12年の間に1990年から1999年生まれの人を対象に2回目の追加接種がありました。77年以前は任意接種でワクチン接種を受けていない人が多いのですが、麻疹に自然感染して抗体を持っている可能性が高いと考えられています。

 妊婦さんが麻疹に感染すると、妊娠していないときに比べて重症化し、流産や死産、早産や低出生体重になりやすいと言われています。

 妊娠初期に行う採血での初期検査は自治体によって異なり、麻疹の抗体検査を行っていないことが多くあります。希望すれば自費で麻疹の抗体検査を行える施設もありますので、主治医の先生に相談してみるとよいでしょう。女性は麻疹のワクチン接種後2か月間は妊娠を避ける必要があります。また、妊婦さん本人は麻疹の予防接種を受けることはできませんが、麻疹の抗体を持っているのかがわからないご家族がいらっしゃるなら、検査してワクチン接種を検討するとよさそうです。

 妊娠中に麻疹感染者に接触したかもしれないという時も、電話連絡をしてから受診するようにしましょう。検査で抗体がないときは、麻疹感染者に接触してから5~6日以内ならガンマグロブリンという薬剤で、発症の予防や症状を軽くすることができるかもしれません。

免疫を低下させないために

 麻疹に感染しても抗ウイルス薬による治療法はありませんので、予防接種を受けることが大切です。

 そして、万が一感染症にかかってしまっても重症化しないようにするためには、やはり免疫力を下げないことが大切でしょう。

 免疫力が低下している、離乳食が始まる生後6か月頃から離乳食完了期の1歳半頃までは、感染症にかかりやすくなります。赤ちゃんがもぐもぐとかんで飲み込むことに慣れてくる生後7~8か月頃の離乳中期になったら、炭水化物である全粥ぜんがゆのほかにも、軟らかい野菜や果物などでビタミンやミネラル、そして豆腐や白身魚などのたんぱく質をメニューに加えて、バランスのよい食事にしましょう。

 予防接種には、年齢ごとに、起こりやすい病気を治療するという目的があります。赤ちゃんの体調の良い日をなるべく多くして、予防接種をスケジュール通りにこなせるといいですね。

 (新見千雅・日本気象協会・気象予報士)

 監修 鈴木孝太 愛知医科大学医学部教授(衛生学講座)

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気象予報士ママの「健康注意報」

新見 千雅(にいみ ちか)
日本気象協会 気象予報士

 呼吸器、透析分野で看護師として勤務した後、気象会社で原稿の作成やラジオ番組を担当。現在は、日本気象協会と株式会社JMDCが進めている、気象データとレセプト(医療報酬の明細書)データを使って、様々な疾患の発症・重症化リスクに関する情報を提供するサービス「Health Weather(R)(ヘルスウェザー)」プロジェクトに参加している。
 2児の母として、妊娠・出産・育児にまつわる天気のコラムを執筆中。


鈴木 孝太(すずき こうた)
愛知医科大学医学部 衛生学講座 教授

 1974年、東京都生まれ。2000年、山梨医科大学医学部卒。2005年、山梨医科大学大学院医学研究科修了(博士(医学))。2011年 、University of Sydney Master of Public Health (MPH) Coursework修了。山梨大学医学部助手、助教、特任准教授、准教授を経て、2016年から現職。専門分野は周産期から小児期にかけての疫学、産業保健、ヘルスプロモーション。
 最近は、「Health Weather(R)」と共同で、気象と健康に関する研究を実施している。



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