産業医・夏目誠の「ハタラク心を精神分析する」
医療・健康・介護のコラム
新型コロナ禍でリストラ心配…不安に対処する方法とは?
第2ステップ リストラに備え、支出3割カットを考える
由紀さん:これが、私の3年間の収入と支出、そして内訳です。
産業医 :支出を3割カットしてください。仮にリストラされても、収入減を覚悟すれば転職先は広がるので、再就職しやすくなります。現実問題から言うと、女性の方が年収は低いので、男性に比べて再就職しやすいです。
由紀さん:うーん。3割減は厳しい。
産業医 :どこを削りますか。
由紀さん:部屋代、次に食費と交際費、小遣いなどです。
産業医 :その結果を記入してください。
由紀さん:(記載した表を見ながら)これじゃ、楽しみがなくなる。意欲低下する。
産業医 :お金がかからない楽しみ方が重要ですよ。おしゃべりは、お勧め。あるいはお楽しみの日を設けて、その日だけは、少しお金を使うのもあり。
由紀さん:楽しみ方の工夫ですね。
産業医 :では次回に。
第3ステップ 「七つの健康習慣」で健康維持
産業医 :リストラ不安に苦労してきたと思いますが、人生、健康が一番ですよ。体を壊してしまっては働けませんから。第3ステップは健康に暮らすポイントです。アメリカの公衆衛生学者、ブレスロー教授が考え、世界的に使われている「七つの健康習慣」を見てください。
由紀さん:はあ。
産業医 :いくつ実施していますか?
由紀さん:五つは出来ています。適正体重維持と、間食をしないはダメです。
産業医 :まずまずです。
寿命が延び、要介護率も減少
産業医 :報告によれば当時45歳ぐらいだった被験者のうち、六から七つの健康習慣数を持つ人は、そうでない人に比べ、平均11年、長生きしたことが証明されています。
由紀さん:そんなに効果があるんですか。(明るい表情に)
産業医 :さらに有益なデータがあります。
由紀さん:教えてください。
産業医 :将来、介護が必要になる比率も違ってくるんです。七つ習慣を実施している人と比較すると、四つしか持っていない人は12%、二~三つしか持っていない人は14%、ひとつしか持っていない人に至っては19%も高くなっています。
由紀さん:守ります。守らなくちゃ。
産業医 :笑顔になったよね。
実行すべきことがわかれば、悩みは半減
由紀さん:やるべきことが見つかって安心します。
産業医 :目標がないと、不安だらけ。やることが決まれば、前向きになれます。由紀さん、笑顔が出るようになったよ。
由紀さん:出ていますか。やってみます。先生、ありがとうございます。
雇用危機には、もちろん経済対策が重要ですが、個人として気持ちをどう切り替えるか、対処法を知っていると役に立つと思います。
最後に、「マコトの一言」で締めさせていただきます。
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絶対に解決されない問題との向き合い方ですよね。 他の幾つかの問題と同じく、新型コロナウイルス問題によって顕在化しただけで、昔から存在していた問題...
絶対に解決されない問題との向き合い方ですよね。
他の幾つかの問題と同じく、新型コロナウイルス問題によって顕在化しただけで、昔から存在していた問題。
リストラはそもそも解雇という意味ではないはずですが、婉曲表現がむしろポピュラーな言葉になってしまいました。
ある組織で構想外にならないための生き方と構想外になった後での生き方。
大学や専門学校の在り方も含めて、変わっていくことでしょう。
専門教育とともに、人間としての生活基礎能力を考えていく時代になってきたのではないかと思います。
社会の中でITやAIと共に先端技術や価値を生み出せる人材とそれを支えるチーム以外の人間は、むしろ、支出を抑える汎用性や自分の生き場所を探せる能力の方が大きくなってくるのではないかと思います。
フリーランスではなくても、自分の技術や体力を切り売りして生計を立てていく人生設計の意識が必要になってくるのかもしれません。
また、様々な手当のある組織で働いている場合、リストラを想定した生活設計も大事になります。
医療業界でも、様々な業態変更が進むのでしょうが、自分の持ってない能力や適性を組織に要求されれば、その時はむしろ新しい道に進む必要が出てきます。
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