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産業医・夏目誠の「ハタラク心を精神分析する」

医療・健康・介護のコラム

新型コロナ禍でリストラ心配…不安に対処する方法とは?

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新型コロナ禍でリストラ心配…不安に対処する方法とは?

 新型コロナ禍が世界中を覆っています。アメリカやイギリス、イタリアなどの都市封鎖や我が国の緊急事態宣言などにより、長期間の巣ごもり生活を余儀なくされています。飲食・観光・販売業などのサービス業は大打撃でしょう。リーマンショック以上の不況に陥り、ILO(国際労働機関)は世界の労働人口の約38%が雇用リスクに直面すると報告。日本でも、閉店などに伴う失業が懸念されています。

不安に押しつぶされず、気持ちを強く持つ方法とは?

 私が精神科医・産業医業務を行っている企業で、これまでもリストラに伴うストレスの相談を受けてきました。事業の再編成に伴う雇用不安への対処法の問題です。精神科医ですから、会社の経営方針は専門外ですが、心の問題には手探りで対応してきました。経験を重ねると、不安に押しつぶされないで、心を強く持つための方法がわかってきました。試行錯誤の中で考案したのが「3ステップ法」です。新型コロナ不況に伴うリストラ不安への効果的対処法になると考えたので、事例を挙げながら紹介します。

営業所統廃合で32歳、女性販売員はリストラが不安

 山形由紀さん(仮名)が勤務する販売会社では、数年間、売り上げの減少が続き、リストラの最中です。事務部門縮小や支店閉鎖、営業所統廃合が行われています。約120人が割り増し退職金をもらい、辞めていきました。彼女も「リストラされるのではないか」との不安から、相談室を訪れたのです。

産業医 :産業医の夏目です。お疲れのようですね。

由紀さん:わかりますか。不安や疲れ、不眠です。

産業医 :営業所勤務ですね。人員削減がストレスですか?

由紀さん:そうです。希望退職にならないかと不安で……。

産業医 :リストラは強いストレスですよね。 

由紀さん:気持ちを楽にする方法がないか知りたくて、勇気を出して来たのです。

産業医 :そうか。

由紀さん:じっとしていられないというか、夜中に数回、目覚めてしまいます。

不安に負けない方法、それは「3ステップ法」

産業医 :ざっくり言うと対応には、会社が行うことと個人がすることの二つがあります。リストラは会社の経営方針なので、我々はどうすることもできない。

由紀さん:(がっかりしながら)そうですよね。

産業医 :でも、個人ができる対処法があります。

由紀さん:あるんですか。ぜひ、教えてください。

産業医 :「3ステップ法」と名付けています。

第1ステップ 3年間の収入と支出を書き出す

産業医 :第1ステップは、リストラ不安による悩みや疲れ、思考ができない状態への対応です。

由紀さん:考えが空回りしています。

産業医 :わかります。

由紀さん:考えないようにと思っても、浮かんできます。

産業医 :ほかのことを考えるようにすればいいのです。

由紀さん:何を考えれば?

産業医 :最近3年間の収入と支出を計算してください。貯金額も。

由紀さん:おぉ、そう来るのですね。

産業医 :ポイントになるテーマです。例えば年収が330万円。支出が320万円として、部屋代、食費……など内訳も書いてください。

由紀さん:うーん、細かい内訳なんてわかるかなぁ。でも、やってみます。

産業医 :作業を始める前に温泉旅行などをするのもいいですよ。目的はストレスになっている職場から離れ、環境を変えることです。

由紀さん:職場がストレス源。だから離れる?

産業医 :温泉につかり、たまった疲れを取り、おいしいものを食べます。リッチな気分を味わってね。エステやマッサージもお勧め。心身が癒やされますよ。

由紀さん:環境を変えて癒やす……。

産業医 :そうすると、思考力が戻ります。それから、3年間の収支を振り返ってみてもいいですね。結果を次回、持参してください。それを基本に、話し合いましょう。

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natsume-prof

夏目誠(なつめ・まこと)
 精神科医、大阪樟蔭女子大名誉教授。長年にわたって企業の産業医として従業員の健康相談や復職支援に取り組み、メンタルヘルスの向上に取り組んでいる。日本産業ストレス学会前理事長。著書に「中高年に効く! メンタル防衛術」「『診断書』を読み解く力をつけろ」「『スマイル仮面』症候群」など。新著は企業の人事や産業医向けの「職場不適応のサイン」。ブログ「ストレス点数の夏目」はこちら

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1件 のコメント

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転ばぬ先の杖が求められる時代

寺田次郎 関西医大放射線科不名誉享受

絶対に解決されない問題との向き合い方ですよね。 他の幾つかの問題と同じく、新型コロナウイルス問題によって顕在化しただけで、昔から存在していた問題...

絶対に解決されない問題との向き合い方ですよね。
他の幾つかの問題と同じく、新型コロナウイルス問題によって顕在化しただけで、昔から存在していた問題。

リストラはそもそも解雇という意味ではないはずですが、婉曲表現がむしろポピュラーな言葉になってしまいました。
ある組織で構想外にならないための生き方と構想外になった後での生き方。

大学や専門学校の在り方も含めて、変わっていくことでしょう。
専門教育とともに、人間としての生活基礎能力を考えていく時代になってきたのではないかと思います。
社会の中でITやAIと共に先端技術や価値を生み出せる人材とそれを支えるチーム以外の人間は、むしろ、支出を抑える汎用性や自分の生き場所を探せる能力の方が大きくなってくるのではないかと思います。

フリーランスではなくても、自分の技術や体力を切り売りして生計を立てていく人生設計の意識が必要になってくるのかもしれません。
また、様々な手当のある組織で働いている場合、リストラを想定した生活設計も大事になります。

医療業界でも、様々な業態変更が進むのでしょうが、自分の持ってない能力や適性を組織に要求されれば、その時はむしろ新しい道に進む必要が出てきます。

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