40代から備えよう「老後のお金」 楢戸ひかる
医療・健康・介護のコラム
知ってますか? 夫亡き後の妻を守る「配偶者居住権」が創設されました!
人生100年時代、夫亡き後を保障する
けれども、それをしてしまうと、妻が所有する現金は少なくなり、生活費に困ってしまうこともありました。
「今回の法改正では、平均寿命が長くなる中で、『残された配偶者の生活保障』が重要視されました。尚子さんの生活が立ち行かなくなるような事態をさけるために、配偶者が持ち家に住み続けられ、かつ預貯金も相続できるための『配偶者居住権』という考え方ができたのです。この制度は、いわば、 残された配偶者の生活を守るために創設された制度 です。新しい法律は、 令和2年4月1日以後 に開始した相続から適用されます」(廿野さん)
配偶者居住権という考え方では、譲さんの持ち家の価値を、「住むこと」「所有すること」の二つに分けて考え、評価(値段)も、それぞれに設定します。相続税の申告が必要な場合も、この考え方で評価します。こうすることにより、尚子さんが配偶者居住権に加え、預貯金も相続することができるようになり、今後の生活費の心配は減ることになります。
残された人が困らないために「遺言書」を
「この制度はまだ始まったばかりなので、気になる点もあります。たとえば、固定資産税の支払いには、配偶者居住権を持つ尚子さんの負担分もあるようです。ただし、固定資産税の通知は、毎年、所有者である健一郎さんへ送られます。そうなると、毎年、尚子さんと健一郎さんの間でどのように税金の精算をするのか?といった問題も出てきそうですね」(廿野さん)
とはいえ、こうした制度ができたことを知っておいて損はないですね。尚子さんが配偶者居住権を行使するためには、「尚子さんと健一郎さんが遺産分割協議をする」「譲さんが遺言を書いておく」「譲さんの死後、尚子さんが贈与を受ける」「家庭裁判所の審判」などの手続きが必要になるそうです。廿野さんは、「『もめない』という意味で、譲さんが元気なうちに遺言書を作成することをおすすめします」と言います。
大切なのは、自分の亡き後のことをイメージして、死後、家族の生活が不安になったり、家族でもめたりしないよう、相続の内容をクリアにしておくことだと思います。遺言書は、終活の一環であり、「総仕上げ」なのかもしれません。(楢戸ひかる マネーライター)
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