文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

知りたい!

医療・健康・介護のニュース・解説

大腸憩室症…袋状の突出 出血や炎症

 大腸の壁の一部が袋状に膨らみ、外側に向かって飛び出る病気を「大腸 憩室けいしつ 症」という。出血や強い痛みを伴う炎症が起こりやすくなる。患者は高齢者が多く、大量出血すると手術が必要になる場合もあり、注意が必要だ。(諏訪智史)

大腸憩室症…袋状の突出 出血や炎症

直径1センチ前後

 大腸の壁には、便を送り出す収縮運動を担う筋肉の層がある。血管が筋肉層の所々を貫通しているが、腸の運動に伴って内側から圧力がかかると、押し返す力の弱い貫通部が逆に押し出されてしまうことがある。

 こうしてできた袋状の突出部を「憩室」という。直径1センチ前後で、1、2個にとどまる人もいれば、長い時間を経て100~200個できてしまう人もいる。

 飛び出ているだけでは無症状だが、憩室の血管が破れると便に血が混じり、初めて異常に気づくことが多い。まれに大量出血することがあり、血圧が急激に下がって意識障害や臓器不全を起こす危険性もある。

 出血がなくても、憩室に炎症が生じると、強い腹痛や高熱に見舞われる。炎症部に穴が開き、腹膜炎などの重い合併症を患う人もいる。

 ただ、無症状のままの人も多く、どうして憩室ができるのか、実態はよくわかっていない。大腸の内視鏡検査を受けた人の約2割から憩室が見つかったとする調査報告もある。加齢で腸壁が弱くなった高齢者や、食物繊維の摂取量が少ない人は、憩室ができるリスクが高いと考えられる。

 出血は、便などの刺激で憩室の血管が傷ついて起こる。血液をサラサラにする薬を服用している人は、血が止まりにくいので要注意だ。まず内視鏡で検査し、憩室が原因かどうかを確認する。一方、炎症の主な原因は、憩室に便がはまり込むなどし、細菌が繁殖することだとされる。

  クリップで止血

 治療は通常、出血部を内視鏡で確認しながら、憩室の入り口や傷ついた血管を医療用のクリップで挟んで止血する方法がとられる。憩室そのものは残るため、再出血のリスクは高い。

 近年、内視鏡を使って憩室を腸の内側に引っ張り込み、根元をゴムバンドで縛る「EBL(内視鏡的バンド 結紮けっさつ 術)」も登場した。縛った憩室は 壊死えし してなくなるため、クリップより再出血が少ない利点がある。

 ただ、器具の操作が難しく、壊死した部分に穴が開くこともあるため、治療対象は限られるのが現状だ。

 炎症で痛みが強い場合、入院して絶食し、細菌を殺す抗菌薬や栄養分を点滴で投与する。腸に穴が開くなど炎症が重症化すると、患部の腸を切って縫い合わせる緊急手術が必要になる。

  食物繊維の摂取を

 一方、無症状なら治療の必要はない。予防は難しいが、憩室が増えないよう食物繊維をとることなどを心がけたい。肥満や飲酒、喫煙は、憩室から出血や炎症を起こす要因となる。対応が早いほど内視鏡治療がスムーズにできるため、ためらわずに受診する。

 近畿大教授の樫田博史さん(消化器内科)は「食生活の変化や高齢化などで、この病気の患者数は増加傾向にあるとされる。大腸がんの原因になることはないが、50歳以上の人は一度、がん検診で大腸の内視鏡検査を受けることを勧めたい」と話している。

知りたい!の一覧を見る

最新記事