中川恵一「がんの話をしよう」
医療・健康・介護のコラム
[岡江さん死去]乳がん治療はコロナ重症化に影響するのか?
女優の岡江久美子さんが新型コロナウイルスによる肺炎で亡くなりました。63歳の若さでした。ご 冥福 をお祈りいたします。
今月3日に発熱し、自宅で様子を見ていたところ、6日朝に病状が急変して緊急入院し、人工呼吸器を装着。PCR検査で新型コロナウイルスに感染していることが確認されたといいます。
「ロシアンルーレット」的な怖さ
このウイルスは、感染しても8割方が、軽症あるいは無症状ですむ反面、岡江さんのように重症化する人もいます。重症化には喫煙などの要因もありますが、このウイルスの「ロシアンルーレット」的な面は、本当に怖いと思います。
さらに怖いのは、この病気で亡くなる場合、発症から死亡までが非常に早い点です。イタリアのデータでは、平均でわずか8日間。岡江さんのケースでも、入院から2週間あまりでの突然の死です。
初期乳がんの放射線治療 背骨の被ばくはゼロレベル
さて、気になるのは、以下の所属事務所のコメントです。
「昨年末に初期の乳がん手術をし、1月末から2月半ばまで放射線治療を行い免疫力が低下していたのが重症化した原因かと思われます」
日本臨床腫瘍学会はホームページのQ&Aで、重症化のリスクについて、「60歳以上で病気をもっている方(心臓病、糖尿病、肺疾患、がん、透析患者)」などとしています。
岡江さんについては詳しい経過が分かりませんが、一般的に言えば、初期の乳がんの手術後の放射線治療で免疫力が大きく下がることはまずありません。
免疫を担う白血球などは、骨髄で作られます。この「造血機能」は、成人の場合は背⾻が中⼼です。乳がんの放射線治療では胸⾻や肋⾻は被ばくしますが、背骨への被ばくはゼロレベルですから、免疫力の低下は考えにくいと言えます。
日本乳癌学会の井本滋理事長も、報道によると、以下のコメントを出されています。
「放射線治療を受けた患者で、まれに肺が部分的に炎症を起こすことや、免疫をつかさどる白血球が減少することもあるが、新型コロナウイルスによって重症化する原因になるほど、免疫力が下がるとは考えにくい。同様の治療を受ける患者さんについては感染予防を徹底する必要はあるが、過剰な不安は抱かないでほしい」
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