心のアンチエイジング~米寿になって思うこと 塩谷信幸
医療・健康・介護のコラム
ようやくPCR検査拡大へ、すべてに対策が遅い……88歳の医師は思う
新型コロナウイルスが発生してから、80歳以上の高齢者の感染危険と肺炎による死亡が問題になっています。高齢者の感染に対する抵抗力の弱さは、抗加齢に関わる医師の間でも常識となっています。普通なら風邪で済むものが、高齢者の場合には肺炎になりやすい。また肺炎から死亡する確率も高い。やはり一番の原因は加齢に伴う免疫能の低下にあるとされています。
1月に中国・武漢で感染が広がった時にマスクを買っておいた
僕自身も88歳ですから、まず、極力外出を控えるようにしています。仕事先も閉鎖されているところが多く、学会、セミナーも全てキャンセルか延期になっています。また、テレワークということで、苦手なパソコン、インターネットと格闘しています。でも、やってみると、結構これで間に合うことも多く、新型コロナが落ち着いたら、ワークスタイル、ライフスタイルも変わるかもしれませんね。
散歩は毎日しています。体を使わないと頭も働かなくなりますね。近所のスーパーにはどうしても出かける必要はあるし、本を読む絶好の機会なので、書店にも立ち寄っていますが、人との距離は保つようにしています。マスクは、1月に中国の武漢で騒動になった時に、「日本にも来るぞ」と思って、買っておきました。
一番つらいのは子供や孫たちに会えないこと。同じ横浜市内や東京、それに二家族はニューヨークにいて、新型コロナでは我々以上に苦労しているようです。
政府の対応は、医師として不可解
今回の事態に対する政府の対応には、医師としては不可解というか納得ができないことが多々あります。まず初動の遅れ。
① クルーズ船の乗客のコントロールの不備
② 1月、武漢で発生してからも、中国からの入国に制限を加えなかったこと
③ それ以外の感染国からの入国制限に政府が及び腰だったこと
④ PCR検査にブレーキをかけてきたこと
①~③については今更、言ってもいたしかたありませんが、収束後に責任と今後の対策の検討はしっかりなされなければならないでしょう。
問題はPCR検査へのブレーキです。厚労省の専門家会議も4月22日になって検査拡大を提言しましたが、検査の少なさは実態把握を妨げていました。これは科学の問題です。医師の務めは「病気の治療」にあります。そのためにはまず「病気の診断」が必要です。診断には症状の把握と検査が必要です。感染の広がりなど現状把握と、それに基づいた情報の開示が不十分なまま、外出自粛の号令をかけてきました。21日には、慶応大学病院が、新型コロナと関係のない、入院、手術予定の67人にPCR検査をすると、4人が陽性、つまり6%の陽性率だったと発表しました。すでに東京の街中で17人に1人が感染している可能性が示されたわけです。 蔓延 と言えるでしょう。
PCR検査の拡大が必要
PCR検査は不正確だという議論があります。偽陽性と偽陰性の存在です。これは 為 にする議論と言えましょう。検査が100%でないことは、どの検査も同じです。ある程度の精度があれば有用です。PCR検査も十分役立つ精度はあると日本の多くの医師も世界も考えてきました。地域によってはドライブスルー検査なども始まり、医師の指示があれば、検査を受けられるようになってきました。医療資源に限界もあるとは思いますが、もっと検査を拡大する必要があると僕は考えています。
実際にできることとして、今はともかく外出そのものを控えてコロナを抑え込むことに全力をあげなければなりません。そして免疫力のアップ。日頃のライフスタイルが大切です。バランスのとれた食事と適度な運動、そして安眠が大切。散歩でも、マスクは当然ですが、人との距離を取るように注意しています。(塩谷信幸 アンチエイジングネットワーク理事長)
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