田村専門委員の「まるごと医療」
医療・健康・介護のコラム
新型コロナで「3密」回避 医療系のイベントにもウェブ会議が普及
いったんは中止を決めたがオンラインで「復活」
新型コロナウイルスの感染予防対策として、ビジネスの打ち合わせからプライベートの飲み会まで、「3密」を避けてオンラインによるウェブ会議システムが急速に広まりつつあるなか、医療や介護関係の団体などの会合にもウェブ会議が普及してきた。新型コロナの影響でいったんはイベントの中止を決めたものの、ウェブ会議を利用することで形を変えて開催にこぎ着けた例もある。利用する側の慣れの問題やセキュリティー面の課題も指摘されるが、自宅に居ながら参加できるため、従来の会議よりも幅広い参加者が得られるなどの利点も大きそうだ。
250人余りをオンラインで結んで
「新型コロナ・ショックに備えて私たちができること」。一般社団法人エンドオブライフ・ケア協会は4月18日、オンラインのウェブ会議システムを使ったシンポジウムを開いた。同協会は、人生の最終段階に対応するケア「エンドオブライフ・ケア」のための人材育成などに取り組んでいる。元々は協会発足5周年の記念イベントを計画していたが、新型コロナウイルスの感染拡大のためにいったんは中止を決定。新型コロナを新しいテーマに据え、オンラインに変えて、開催にこぎつけ、この日250人余りがオンラインで参加した。
演者の一人で同協会理事の長尾クリニック院長・長尾和宏さんは、通常の診療に使っている携帯とは別に、新型コロナへの問い合わせ専門に使う携帯(コロナ携帯)を用意して、患者や医療者との連絡に使っている取り組みを紹介。たとえ感染しても、肺炎を早期に発見して治療につなげることが大切であると話した。また、感染を恐れるあまり、施設などに高齢者が閉じこもり続けると、かえって衰弱を招いてしまうことや、十分な換気を行うこと、外に出て歩くことの重要性などを指摘した。
参加者は、講演を聴きながら文章を書き込める「チャット」の機能を利用して質問を送り、演者が答えるなどのやりとりが行われた。同協会代表理事のめぐみ在宅クリニック院長の小沢竹俊さんは、今後の研修会なども、オンラインを利用して開催していくことを紹介。これをきっかけに、それぞれが緩くつながりながら取り組んでいくことへの期待などを述べた。
オンライン参加による広がりも
患者と医療者をつなぐ活動に取り組む「患医ねっと」が12日に開催したのは、「今こそ、薬局・薬剤師が、最後の砦(とりで)として、すべきこと、できること~新型コロナウイルス蔓延(まんえん)防止対策の事例発表会」。主に薬剤師を対象にしたもので、新型コロナの感染拡大を受けて急きょ企画された。
短期間の告知だったにもかかわらず、筆者ら薬剤師以外の人も含め十数人が参加し、4人の薬剤師が演者となって、感染予防のための手作り防護シールドの工夫や地域への呼びかけなどの取り組みを披露した。終了後には参加者らによるオンラインのグループが作られ、情報交換が続いている。
19日には、患者協働の医療を推進する会(AMCOP)の月例ミーティングに参加。こちらは、前月に続いてのウェブ会議で、オンライン開催が定着してきた感じだ。新型コロナウイルスの見通しが不透明ななか、秋に計画している年間イベントが当初の計画通り開けるのかどうか、オンラインでの開催も視野に入れなければといった話題も話し合われた。
交流を図るための工夫を
新型コロナウイルスの感染が本格化し始めた頃、様々な医療関係の催しの中止の連絡を連日のように受け取った。しかし、最近は、いったん中止したイベントをオンラインに切り替えて開催したり、最初からオンラインで企画されたりすることが、非常に増えた。
筆者がよく参加している勉強会でも、オンライン開催にしたことで、常連でない参加者が増えるなどの効用もみられる。遠方に住む人や、病気や障害のために移動が難しい人でも自宅にいながら参加できる利点がある。患医ねっと代表の鈴木信行さんは「気軽に、どこの方とでも、つながり、学べるということで画期的。学会のあり方なども変わっていくと思う」と話す。
一方、通常のイベントであれば、終了後に演者を囲んだり、参加者同士の名刺交換の輪がそこかしこにできたりして、交流が図られるのも魅力だ。オンラインイベントの主催者も、参加者間の交流をどう図るかに知恵を絞っているという。システムのセキュリティー面などの改善とともに、利用する側の工夫も今後進んでいくと思われる。オンラインの可能性への期待は大きい。(田村良彦 読売新聞専門委員)
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