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「死にたい」に寄り添うには…松本俊彦氏に聞く

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「死にたい」に寄り添うには(4)増える未成年の自殺 衝動…思いついてから1時間ぐらいで

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 「死にたい」人の家族は、距離が近いからこそストレスも大きい。1人で抱え込まないことが何より大事です。一方、自殺者は10年連続で減りましたが、年代別では唯一、未成年が増えました。深刻な問題です。(山口博弥 編集委員)

家族にも怒りや敵意が

「死にたい」に寄り添うには(4)増える未成年の自殺 衝動…思いついてから1時間ぐらいで

松本俊彦氏

――家族の場合、あまり「死にたい」と言われると、「もう、いいかげんにしてよ」ってなりかねないですよね。

 それは当然だと思います。だからこそ僕は、家族へのサポートが、すごく大切だと思うんですよ。自分の家族の誰かが、いつも「死にたい死にたい」って言っている。そういう環境にいるなら、家族自身が保健所や精神保健センターに行って、「こういう状況なんです」と相談することが大事だと思うし、できれば定期的に行って、もう愚痴ったらいいと思うんですよ。「なんかもう、死ぬ気があるんだか、ないんだか、わかんないけど、くさくさしちゃいます」なんて、本人の目の前で言うと余計傷つけちゃいそうな言葉も、そういう所で言えたらいいですよね。

 僕ら専門職の人間だって、自分としては頑張ってるつもりなのに、「死にたい死にたい」って、依然として言われると、無力感にとらわれるだけじゃなくて、怒りとか敵意がわいてくるものなんです。それは当然で、家族のようにもっと近しい関係だと、「死にたい」って言われる度に、自分が親として、家族としての対応を非難されているような気がしてくるんですよね。で、それが怒りとか敵意になって、言わなくていいことも言っちゃう。

 「ほんとに死ぬ気があったんなら、あんなこと言わないわよ。やれるもんなら、やっちゃいなさい!」みたいなことになっちゃって、それで、ほんとにやってしまうこともあるんですよね。家族がそうならないようにするためには、家族のサポーターが必要です。家族の気持ちになって、「おつらいですよね。仕事から帰ると、死にたい死にたいと言われて」と共感してくれる人がいるかいないかで、ずいぶん家族のスタミナ、心のスタミナの持ち具合が違うと思うんですよね。

地域の保健行政機関へ

――それは保健所とか精神保健センターになる?

 もちろん、医療機関でも、患者さんとしてカルテを作るということがあれば、それもありうるだろうな、と思います。ただ、精神科の医療機関は、外来が混んでて、じっくり話ができないような気がします。それに比べると、保健行政機関の方が、1回1回、丁寧に話をしてくれる気がするんですよね。

――スタッフに当たり外れはあるかもしれないけど、それはどこでもあることですよね。

 まあ、それはね、どこでもあるんですよね。保健所の場合は、なかなかチェンジがしにくいというか。医療機関なら、別の医療機関に行くことができるんだけど。

 でも、多くの場合、保健行政機関には三つの選択肢があると思うんですよ。都道府県、政令指定都市に住んでいる人は、1か所ある精神保健福祉センター。ここはメンタルヘルスの専門家が配置されているので、僕は、対応に当たり外れはないと思っているんです。

 もう一つの選択肢は、都道府県の保健所。あともう一つは、自分たちが住んでいる市区町村の保健センターや福祉センターといわれるような相談窓口。これらをうまく使う。

いずれも無料でサービスが受けられるという点では共通してるし、精神保健福祉センターなんかだと、自助グループや家族会などのNPOに関する情報もあります。

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