「死にたい」に寄り添うには…松本俊彦氏に聞く
インタビューズ
「死にたい」に寄り添うには(4)増える未成年の自殺 衝動…思いついてから1時間ぐらいで
「もう世界が終わった」って…

――自殺者は10年連続で減りましたが、年代別では唯一、未成年が前年より増えました。これは深刻な問題ですね。
年齢が若ければ若いほど、成人よりも低い水準の苦痛で死にたいと思うのです。なぜなら、やっぱり人生の選択肢というか、逃げ道に関する情報を持ってないから。
小学校4年生ぐらいまでは、家庭が世界のすべてだと思うんですよね。高校1年ぐらいまでは、学校が世界のすべて。そこでドン詰まっちゃって、「もう世界が終わった」って思っちゃう子はけっこういると思うんです。
もちろん、子ども時代にいじめを受けて、その時はつらかったけど、なんとか生き延びて、今、社会で成功されている方はたくさんいると思います。子ども時代を振り返って、「いろいろあったけど、あれがあったから、今の自分がいるんだよね」というふうに、肯定的に思えている人はたくさんいると思う。でもそれは、たまたま運がよかったわけで、やっぱり、そこでドツボっちゃう子たちもいるんですよね。もう世界が終わった、と思って。
じゃあ、ドツボらない子はどんな子なのか。もちろん能力があったり、いろんな情報を持っていたり、たまたま周りに、子ども時代にうまくいかなかったことがあるけど生き延びた大人に出会っていたりとかね。そういうのがなければ、ドン詰まっちゃう子がいてもおかしくない。しかも、子どもは結構、自殺行動を衝動的に行うので、ネガティブなイベントがあってから行動を起こすまでの期間が、短かったりするんですよね。だから、周りが止めに入れない。思いついてから1時間ぐらいでやってる、という報告もあるぐらいで。それに比べれば、大人は迷っている時間があるんです。(松本俊彦 国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所薬物依存研究部長)(続く)
松本 俊彦(まつもと・としひこ)
国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所薬物依存研究部長
1993年、佐賀医科大学(現・佐賀大医学部)卒。国立横浜病院(現・国立病院機構横浜医療センター)精神科、神奈川県立精神医療センター、横浜市立大学病院精神科、国立精神・神経センター(現 国立精神・神経医療研究センター)精神保健研究所自殺予防総合対策センター副センター長などを経て、2015年から現職。17年から国立精神・神経医療研究センター病院薬物依存症センター長を兼務。日本アルコール・アディクション医学会理事、日本精神科救急学会理事。主な著書に『自分を傷つけずにはいられない』(講談社)、『薬物依存症』(ちくま新書)、『「助けて」が言えない』(日本評論社)など。
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