文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

「死にたい」に寄り添うには…松本俊彦氏に聞く

インタビューズ

「死にたい」に寄り添うには(3)「生きてさえいれば、きっといいことがある」は、言っていいのか?

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

 「死にたい」と言われた時、家族や友人はどう対応すればいいのでしょうか。死んでほしくないからこそ、励ますつもりで言った言葉や、正論だと思って伝えた言葉が、かえって相手の心を閉ざしてしまうこともあるのです。(山口博弥 編集委員)

聞くこと、否定しないこと

 

「死にたい」に寄り添うには(3)「生きてさえいれば、きっといいことがある」は、言っていいのか?

松本俊彦氏

――もし、死にたい気持ちになった場合、それぞれ状況は異なるでしょうけど、一般的にはどうすればいいでしょうか。

 いちばんいいのは、安心できる人、説教しない人に、話を聞いてもらうことだと思うんです。でも、なかなか人に言うのは大変ですよね。説教されても嫌だし、軽く流されても嫌だし。だから僕は、ノートに書くことを勧めたりします。あと、これはちょっとリスクを伴うんだけども、SNSの裏アカウントを作って、そこでつぶやいてもいいと思う。もちろん、「一緒に死にましょう」と誘われたり、犯罪に巻き込まれたりするリスクが皆無ではないんだけれども、多くの人たちがよくやっていることではありますよね。

 ノートやSNSに思いを書くことで、いま死にたいと思っている自分を、ちょっと客観視できると思うんですよ。「死にたい」っていう思いにふたをして、こじれていくようなところもあるから、そうならないように自分の思いを書く。

 でも、 いちばんいいのは、誰かとつながることです。

――著書では、「3人ぐらいに相談して」とありましたね。

 僕の患者さんたちは、「相談したけど、誰も役に立たなかった」って言うんですよ。でも、よくよく聞いてみると、1人に相談して適切な対応をしてもらえないと、それでもうあきらめて相談しなくなっちゃう。でも、もう少し、ほかの人に相談することを試してほしい。「三人寄れば文殊の知恵」って言葉もあるぐらいだから。

 ただ、SOSを出せない子たちにとって、何人もを相手に失敗を繰り返すのは、すごく大変なことなんですよ。僕自身、無理を言っていることは承知なんです。むしろ、健康的な人たちが、そういう人たちのサインに気づいて、「なんかあるんじゃない?」と言ってほしいな、と思うんですよね。

できれば、次に会う約束を

 

――やはり、心配している家族や仲のいい友達がどう対応するか、が大事ですね。

 そうです。まず友達の場合、聞いてあげることと、否定しないことが大事です。死にたい理由を言ってくれる場合もあって、一緒に解決に向かって動いてあげたらいいんだけど、解決困難な問題も多いと思うんですよ。でも、それを解決しなきゃ、って思うから、死にたい人の相談は苦しい。

 だから、「何もできないけど、聞くことはできるよ」っていうスタンスでいい。そばにいてくれて、否定されず、「ああ、あなたは今、死にたいくらいつらいんだね」と受け止めてくれた。それだけでも、救われると思います。

 そして、できれば次に会う約束をしてほしい。「次の約束まで生きている」っていう時限的な契約を毎回、更新していく……みたいな関わり。それでいいと思うんです。

 もう一つ、死にたいって思う人をサポートする人たちにも、サポーターが必要なんですよね。話を聞いてあげたあとに、「どうだろう、ちょっと今度さ、保健所とか精神保健福祉センターとかに行ってみない? もし何なら、私もついて行くよ」というふうに、身近な人が、より専門的な支援機関につなげるのを助ける役割をしてほしい。で、身近な人はどこかで卒業していって、専門職の支援者の方にゆだねていく。あるいは、関わり続けたとしても、「1人で背負う」という負担を回避する。そういうことが、すごく大事だと思うんですよね。

 1人で抱えていると、自分がなんとかしなきゃ、助けてあげなきゃ、その人の問題を解決してあげなきゃ、と意気込んじゃって、それが本人にもプレッシャーになることがあるんですよね。だから、難しいことは専門家に任せて、自分は素人として、できることをすればいい。できるのは聞くことだけだ、っていうことです。

1 / 2

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

interviews

インタビューズ
 

インタビューズの一覧を見る

コメントを書く

※コメントは承認制で、リアルタイムでは掲載されません。

※個人情報は書き込まないでください。

必須(20字以内)
必須(20字以内)
必須 (800字以内)

編集方針について

投稿いただいたコメントは、編集スタッフが拝読したうえで掲載させていただきます。リアルタイムでは掲載されません。 掲載したコメントは読売新聞紙面をはじめ、読売新聞社が発行及び、許諾した印刷物、読売新聞オンライン、携帯電話サービスなどに複製・転載する場合があります。

コメントのタイトル・本文は編集スタッフの判断で修正したり、全部、または一部を非掲載とさせていただく場合もあります。

次のようなコメントは非掲載、または削除とさせていただきます。

  • ブログとの関係が認められない場合
  • 特定の個人、組織を誹謗中傷し、名誉を傷つける内容を含む場合
  • 第三者の著作権などを侵害する内容を含む場合
  • 企業や商品の宣伝、販売促進を主な目的とする場合
  • 選挙運動またはこれらに類似する内容を含む場合
  • 特定の団体を宣伝することを主な目的とする場合
  • 事実に反した情報を公開している場合
  • 公序良俗、法令に反した内容の情報を含む場合
  • 個人情報を書き込んだ場合(たとえ匿名であっても関係者が見れば内容を特定できるような、個人情報=氏名・住所・電話番号・職業・メールアドレスなど=を含みます)
  • メールアドレス、他のサイトへリンクがある場合
  • その他、編集スタッフが不適切と判断した場合

編集方針に同意する方のみ投稿ができます。

以上、あらかじめ、ご了承ください。

「死にたい」に寄り添うには…松本俊彦氏に聞く

最新記事