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「死にたい」に寄り添うには…松本俊彦氏に聞く

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「死にたい」に寄り添うには(2)虐待した母が自殺 嫌いな「顔」の整形繰り返した末…

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 「自殺は個人の問題ではなく、社会の問題」という理念のもと、日本の自殺対策はこの十数年で大きく進みました。ただ、生きづらさを抱えて自殺を考える人に対する医療者の支援、特に女性や子どもへの支援は、いまだに遅れたままのようです。(山口博弥 編集委員)

対策進んだが、変わらない医療機関

「死にたい」に寄り添うには(2)虐待した母が自殺 嫌いな「顔」の整形繰り返した末…

――2006年に自殺対策基本法が施行されて以来、日本の自殺対策は進みました。

 実際、自殺者の数が減ってきて、「自殺」ということを言いやすい社会になりました。法律ができる前は、「自殺予防講演会」っていう題名もはばかられていたところもあったぐらいです。だから当時は、追い詰められている人が、「死にたい」なんて、とても言えなかった。それが言える社会になったってことは、すごくよかったなあ、と思っています。

 問題は、危機にある人たちを支援する、助けることを自分たちのミッションとしている専門職の方たちはどうか、という点。私から見ると、やっぱり依然として、「死にたい」ってくりかえし訴えたり、今を生き延びるためにリストカットや過量服薬を繰り返したりしている患者さんは、医療機関の中で、やっかいな患者さんとみなされています。

 患者さんから「死にたい」と言われた時の対応でも、依然として、自殺がいかにいけないかを説教したり、説得したり。そういう対応に終始している医療者もいて、正直言うと、あまり変わっていないという印象があるんですよね。

 確かに、自殺のリスクの高い方たちを支えるのは、医療者にとって負担でもあるし、マンパワーも食われ、時間もかかる。そういう患者さんを1人診ている間に、もうちょっと軽い患者さんを何人も診ることができて、収益性という点ではマイナスです。それどころか、もしその人が死んだ場合、訴訟に巻き込まれる可能性もゼロとは言えない。だから、できれば診たくないし、入院させたくない、という現実もあるんですよ。

中高年男性の自殺は減ったが…

――自殺という「危機」が表面化した人を支えるべき医療現場が、いまだに変わっていないのは、とても残念な話ですね。

 自殺は激減したけど、いちばん顕著に減った層は、1998年に激増した「中高年男性」ですよね。女性は若干減っているんだけど、でも大きくは変わっていないのと、若年者に関しては横ばいで、10代のある層なんかは、むしろ戦後最大の数だったりします。

 働き盛りの男っていうのは、社会で、家の外で傷つきますよね。仕事のこととか、名誉や体面とか。けれど、女性や子どもは、家庭や学校など、わりと近しい関係性の中で傷つくことが多いんですよ。しかも、社会経済的な問題のように、分かりやすい外側の問題ではなくて、トラウマとか生きづらさっていう、外からは見えづらいものに苦しんでることが多々あるんですよね。

 だから、女性や若年者の自殺者の減少が、働き盛りの男性に比べ、いま一つ鈍いのは、やっぱりまだ、そこのところに手が入っていないからじゃないか。「自殺は個人の問題ではなく、社会の問題」ということで、国を挙げての取り組みが進んできたけども、個人の問題の部分は、大きな課題のまま残っている可能性があるんじゃないでしょうか。

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