ペットと暮らせる特養から 若山三千彦
医療・健康・介護のコラム
[看取り犬・文福](3)90代男性、余命1週間での外出は暴挙? 奇跡?
「最期に漁港を見せてあげたい」と職員たち
そんな状態で鈴木さんは、しきりとうわごとで「秋谷漁港、秋谷漁港」と繰り返していました。それを聞いて、ユニットのリーダーの坂田(仮名)は、鈴木さんの人生の最期になんとかして、秋谷漁港を見せてあげたいと考えるようになったのです。
すでに書いた通り、それまでも職員たちは、鈴木さんを秋谷漁港にお連れしたいと考えていたのですが、鈴木さんはとても外出ができるような健康状態ではありませんでした。しかし、余命宣告を受けたとなると、それまでとは健康面の配慮が異なってきます。
例えば、糖尿病や腎臓病のため、食事制限があるご入居者様に対して、1週間の余命宣告がされたら、食事制限に関係なく、お好きな物を食べていただくことがあります。限られた余命である以上、もはや先の健康を考えても意味がないので、最期にお好きな物をお好きなだけ食べてもらいたいという判断です。それと同じように、それまでできなかった外出をさせてあげたいと坂田は考えたわけです。鈴木さんにもう一度、秋谷漁港を見せてあげたいと。
即座に却下も、職員たちはあきらめず
坂田が、鈴木さんの秋谷漁港外出について相談してきた時、私は即座に却下しました。前に書いた通り、命に関わる看取り介護は大変デリケートなもので、一歩間違えれば家族から訴えられる恐れがあります。それなのに、外出させるなどもってのほかです。外出中に亡くなるようなことがあって、家族から訴えられたら、100%ホーム側の負けになります。私にとって、認められるわけがないことでした。
しかし、坂田はあきらめませんでした。私の元に何度も交渉にやってきました。その後の経過は、次回お話しさせていただきます。(若山三千彦 特別養護老人ホーム「さくらの里山科」施設長)
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私も仕事で似たような経験をしました。
がんの余命告知を受け、冬を越すのは難しいと言われた50代の女性。
その人の最期の望みは「地元でお母ちゃんと過ごしたい」
ただ、病状から一刻も早く帰らないと体力的に無理だと主治医から言われていました。
その後、帰省後の住居や新幹線との交渉を早急に手配。
住居は実家は戻る部屋がなく、実家近くに住む妹さんは昔ヤンチャだったその方とは住みたくないと。
そのため、地元でホスピスを探し、事情を伝え、臨時で入居会議を開いてもらいました。
そして、ホスピス無事入居。お母ちゃんとも再会できたそうです。
その後、冬を越せないと言われていたのに、再び夏を迎え
さらには、元気すぎるとホスピスを出されることに。
結局、病気の進行は抑えられず、地元に戻ってから2年後に亡くなったと伺いました。
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願わくば‥
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どの話も涙がでますね
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看取るほうも看取られるほうも、うれしくなるようなお話ですね。 介護の現場で働く皆様のお力があってこそですし、 改めて感謝の気持ちを送りたいです。...
看取るほうも看取られるほうも、うれしくなるようなお話ですね。
介護の現場で働く皆様のお力があってこそですし、
改めて感謝の気持ちを送りたいです。
犬も人間と同じ。家族以上の愛情をもって人に接している姿に
有難いな、と思います。
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