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「感染が、会社が、給料が」 在宅の不安とストレスで家族ギクシャク…ひきこもりの娘が放った「一喝」とは?

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梅谷薫 心療内科医

 「先生、コロナのせいで、わが家は大変なことになってます!」

 心療内科の外来を訪れた、恵美子さん(仮名)は、困り果てた表情でこう切り出した。

 恵美子さんは50歳の女性。軽いうつ病と不眠症で、外来通院を続けている。IT系企業に勤める夫、長男、長女との4人暮らし。最近はだいぶ症状も落ち着いてきていた。

「感染が、会社が、給料が」 不安とストレスで家族がギクシャク…ひきこもりの娘が放った「一喝」とは?

一家で路頭に迷うかも…

 そこへ起きたのが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)。最初は、「要するに風邪のひどいやつだよね」と軽口をたたいていた恵美子さんだったが、2020年3月も後半になると、毎日のように感染者や死者の数が増えていき、テレビやネットでは、世界中にパンデミックが広がっていく様子が報じられる。すっかりパニックに陥ってしまった。

 子どもたちの学校も休校になり、「緊急事態宣言」が発令され、夫の勤務先もすべて在宅ワークになった。「夫の会社が倒産して、一家で路頭に迷うかもしれない」「私もパート先をクビになるかもしれない」、いや「夫や子どもたちがコロナにかかって死ぬかもしれない」……と、恵美子さんは強い不安や恐怖にかられるようになった。

給与や会社の存続に強い不安

 最初は、「毎日が春休みだ!」と喜んでいた大学生の長男も、一通りゲームをやって、マンガを読み終えると、次第にイライラが募り、恵美子さんや父親にあたりちらすようになった。

 夫は夫で、一人きりでは思うように仕事がはかどらず、会社の業績も急降下。今後の給与や会社の存続に強い不安を抱くようになった。ちょっとしたことでカリカリして、恵美子さんや息子を大声でどなる。夫は以前、家族に対して暴力をふるっていたことがある。それを思い出して、恵美子さんは不安のあまり眠れなくなり、うつ症状や頭痛、胃痛など、さまざまな症状が一気に悪化して外来を受診したのだった。

増えるDVや言葉の暴力

 新型コロナ感染の急拡大によって、生活のあちこちに、これまでにないレベルの影響が出ている。

 自宅に閉じこもって外出できないことから、若年層を中心に強いイライラが高じて、家族関係が悪化することも多い。DVや言葉の暴力で、傷つく人たちも増えている。テレビやネットを通して、毎日強い不安や恐怖が引き起こされ、不眠や抑うつ症状などのメンタル不調がひどくなる人も多い。また、経済状況が一気に悪化して、自分の給与や会社の存続が危なくなり、絶望感から心身の不調を訴える人もいる。

 悪い条件がいくつも重なって、多くの人たちが苦しんでいる。先行きが見通せないので、さらに不安感が募っていく……それが現状だ。

 恵美子さんには軽い安定剤などを処方し、この問題について、家族とよく話し合ってみるように勧めてみた。

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