がん患者団体のリレー活動報告
医療・健康・介護のコラム
働く世代のがん患者支援「NPO法人 京都ワーキング・サバイバー」
働く世代でがんになったとき、仕事や家庭のこと、みんなどうしているのだろうか……。同じような立場の方が周りにいないと、副作用のこと、仕事のこと、子供のこと、お金のことなどで見通しが立たない中、一人で不安な道を歩むことになります。そんな方たちが集まり、話し合うことができれば、「同じように不安で悩んでいる人がいる」と知り、孤独感が和らぎます。また、治療後を生きる「がんサバイバー(がん経験者)」の経験や知恵、工夫が、今後の見通しや、治療と仕事や家庭を両立するヒントになります。がんになっても、いきいきと生きる。そのような社会の実現に向けて京都市を拠点に活動しています。
仕事帰りに参加できる定例サロンや個別相談
働く世代のがん患者やそのご家族が仕事帰りに参加できるように、月1回、平日の夜、京都市内のオフィス街にあるがん封じのお寺「 因幡 堂(平等寺)」で、定例サロンや個別相談を行っています。
定例サロンは、偶数月と奇数月で異なるイベントを開催しています。偶数月は女性限定の茶話会を開いています。働く世代の女性は乳がんや婦人科がんなどの患者が多く、がん切除後の身体的な変化や家庭の事情など、女性ならではの悩みを語り合う機会を提供しようというものです。
奇数月は、どなたでも参加できるミニ・イベントを実施。最近では医療者を目指す学生も参加し、模様を描き続けることで精神統一する「ゼンタングル」を一緒に行う中で、世代や性別、立場を超えて共有感が生まれ、自然な形で話がはずみ、お互い新鮮な気づきを楽しんでいます。これまでに延べ100人以上が参加しました。予約の必要はなく、途中からでも気軽に参加できます。
じっくり相談したい方のために、専門職のスタッフによる個別相談も行っています。会社の休暇・勤務制度や公的制度、お金に関することは社会保険労務士がサポートしています。今後の働き方や生き方などを模索されている方には、キャリアコンサルタントが自分らしい選択をするお手伝いをしています。
イベントや啓発活動でつながる・広がる
働く世代のがん患者やご家族に役立つイベントや、私たちの活動、がん治療と仕事の両立の現状などを知ってもらう啓発活動も行っています。
年1回のペースで、がんと就労に関する講演会や着物イベントなどを開催しています。着物イベントは、がん患者とご家族が笑顔になれる京都らしいイベントということで、着付け教室を開いている団体の協力のもと実現しました。全国から40人のがん患者やご家族・ご友人が参加。体調に配慮しながら着物を着て、紅葉が美しい庭でカメラマンに写真を撮影してもらったり、落語を鑑賞したりしました。この着物イベントでは、参加者のとびきりの笑顔を見ることができました。今後も定期的に実施する予定です。
また、京都は大学が多いため、これから社会に出て働く大学生に向けて、がん治療と仕事の両立をテーマにした冊子も製作しました。このほか、がん関連の学会での活動報告、がん征圧チャリティーイベントや京都府・市が主催するイベントでの活動紹介、企業や経済団体、医療機関などでの講演も行っています。
ともに笑顔で生きていける社会に向けて
がんは復職しても治療が終わっても、長くつき合っていく病気です。ライフステージが変われば、新たな悩みが訪れます。そのため、当事者への支援と、社会の理解を促す活動の両方が必要です。今後は、大学生への啓発活動や支援者の育成にも力を入れ、定例サロンでは同じ時間を共有し、支え合うことで、明日を生きる力を取り戻していただく。そんな活動を続けていきたいと思っています。
NPO法人 京都ワーキング・サバイバー
働く世代のがん患者を支援するため、2015年9月に設立。スタッフは社会保険労務士、キャリアコンサルタント、社会福祉士、看護師、栄養士、産業カウンセラー、第一種衛生管理者で、社会保険労務士以外はがん経験者。自らも働くサバイバーとしての困難を抱えつつ、専門家として、働く世代のがん患者の気持ちに寄り添った、具体的な支援、啓発活動を行っている。
このコーナーでは、公益財団法人 正力厚生会が助成してきたがん患者団体の活動を、リレー形式でお伝えします。
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