後閑愛実&ゆき味「看取りのチカラ」
大切な人を看取(みと)るとき、人は何を思い、看取りは、残された人々にどんなチカラを与えてくれるのか。後悔しない看取りについて、現役の病院看護師、後閑愛実さんが、ゆき味さん作画の漫画と文章でつづります。
医療・健康・介護のコラム
「看取りのチカラ」第2話 心に残る最期の言葉
自分の死期を悟った人が、最期に「ありがとう」と言うことはとても多いです。逆に、普段そんなことを言わなかった人が、急に優しくなったり、「ありがとう」と言ったりするようになったら、周りは「そろそろかも」なんて思うこともあります。
人生の最期は、つらくてしんどいことが多いものです。だからこそ、人の優しさをより感じるようになったり、ささいなことに幸せを感じられたりする時期でもあるのだと思います。
ただ、思いや気持ちは、言葉にしないと伝わりません。言葉は、相手や自分を傷つけてしまうこともありますが、相手や自分を癒やしてくれる魔法にもなります。
母親から「おまえなんて産まなければよかった」と言われた後、母親が交通事故で亡くなってしまった高校生の女の子がいました。女の子は、母親から最後に言われた言葉よりも、自分がカッとなって「あんたなんか死んでしまえ!」と言ってしまったこと、それが母親に言った最後の言葉になってしまったことを、後悔していました。
相手に最後に言われた言葉よりも、自分が言ってしまった言葉の方が、強烈に自分の心に残るものです。病気かどうかにかかわらず、人の死はいつ訪れるかわかりません。これが最後かもしれません。今しかないかもしれません。伝えられずにいる思いがありませんか? 後でと言わずに、今あなたから伝えたい思いを伝えてみませんか?
たとえ今は元気でも、新型コロナウイルスのような感染症で突然、隔離されることもあります。家族であっても、会えないまま死に至る可能性もあります。
また、現在、多くの病院が感染対策のために面会の制限を行っています。入院中の家族に会えるのが、重篤な状態になってからで、すでに話すことができない状態のこともあります。そうなってから後悔しないように、話せる時に話をしておきましょう。感染対策で会えないのであれば、電話やメールという方法もあります。(後閑愛実)
<今回のポイント>
・伝えておきたいことは、今、伝えておこう。
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