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米国の大学が報告書…新型コロナ 2年前に予見

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 新型コロナウイルスの感染拡大で世界保健機関(WHO)は3月、「パンデミック(感染症の世界的な大流行)とみなせる」と表明した。国内でも今月7日、東京など7都府県に緊急事態宣言が発令された。こうした中、今回の大流行を予見していたかのような米ジョンズ・ホプキンス大の2年前の報告書が注目されている。(森井雄一)

米国の大学が報告書…新型コロナ 2年前に予見

  勧告8項目

 同大は感染症や公衆衛生の研究で世界的に有名だ。新型コロナウイルスの最新の感染者数や死者数を国別に公表し、広く活用されている。

 報告書は、同大健康安全保障センターのチームが産官学の専門家120人以上から聞き取り、2018年に公表した。パンデミックを起こす恐れのある病原体を評価し、まだ知られていない感染症が発生する可能性も含めて、今後の備えに役立てる狙いがある。

 具体的な方策を8項目の「勧告」として示した。パンデミックを起こす可能性がある病原体に対して備えることや、経験にとらわれず対策を取ることなど、感染症に向き合う基本姿勢が最初に記されている。

 勧告では特に、RNAと呼ばれる遺伝物質をもつウイルスに行数を割いた。呼吸器に感染するタイプが大流行を起こす恐れがあるとして、優先して監視することや、産業界と政府が連携して治療薬・ワクチンの開発を目指すことなどを提言している。新型コロナウイルスも、RNAウイルスの一種だ。

  「次」への備えを

 厚生労働省で感染症対策に取り組んだ長崎大教授の中嶋建介さんは、新しいコロナウイルスの出現は予測されていたと指摘。そのうえで「まだ起きていない感染症には、どうしても予算がつきにくい。今こそ次の感染症の流行を見据えて資金を投じ、人材育成を急ぐべきだ」と訴える。

 病原体の評価では、麻疹(はしか)やインフルエンザを例に挙げ、呼吸に伴う空気感染や 飛沫ひまつ 感染が大流行に最もつながりやすいと指摘する。手袋やガウンなどの防護具だけでは防げないためだ。

 症状が出ていない潜伏期間中や軽症の段階で、周囲にうつす力のある感染症もリスクが高い。感染者に自覚がないため、生活の場で知らないうちに感染が広がってしまう。

 人が十分な免疫を持っていないことや、感染者の多くが死亡する致死率が高い病気ではないことも、流行を起こしやすい条件に挙げた。これらの特徴は、今回の新型コロナウイルスに当てはまる点が多い。

 大流行を起こす病原体には、ペスト菌やコレラ菌などの細菌や、マラリアの原因となるマラリア原虫などがある。

 中でもウイルスを「パンデミックリスクの最高レベル」と警告する。短時間で大量に複製され、変異も起こりやすいので、対策がとりにくくなることが理由だ。細菌に対する抗菌薬のように、幅広いウイルスに効く薬がないことも大きい。

 感染制御に詳しい弘前大教授の萱場広之さんは「感染爆発を目の当たりにすると、報告書の指摘は的確だったと実感する。今回の経験を基に、新たなウイルスを監視する国際的な仕組みを構築すべきだ」と話す。

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