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医師が教える「女と男、髪と地肌の話」 田中洋平

医療・健康・介護のコラム

現代人が毎日のシャンプー習慣で失ってしまったこと

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 世の中は新型コロナウイルス一色です。
 そのためか、今年は冬の間、インフルエンザがほとんど話題になりませんでしたし、本格的に舞い始めた花粉さえ、どこかに吹き飛ばしてしまったかのようです。

 とはいえ、アレルギーをお持ちの人を悩ませる花粉、それにハウスダストなどは、日々髪の毛に蓄積します。やはり、「時々は洗わないと」です。
 ここで、「え、時々?」と思われた方も多いでしょう。

洗髪は時々で?

 実は、私たちの先祖は、めったに髪の毛を洗うことはしませんでした。
 「今のように質のいいシャンプーやコンディショナーがなかった時代なんだから当然でしょ」と思われるかもしれません。でも、そんな時代でも、美しい髪を保っていた人は大勢いました。

 なぜでしょう?
 秘密は、「髪の自浄作用」にありました。

 本来、私たちの頭皮には皮脂を分解してくれる常在菌がおり、それがバリア機能も発揮することで、頭皮は安定し、清潔に保護されるはずなのです。

 ところが、明治時代にせっけんが登場し、昭和になるとシャンプーが生活に入り込みました。

 毎日のように洗髪するようになったことで、現代人の自浄作用はずっと低い状態になっています。とはいえ、「洗わないでもいいのなら」とシャンプーをやめたとしても、昔の人のような自浄作用を取り戻すまでは数か月以上はかかりそうです。現代人は、清潔な状態に慣れきっていますので、やはり洗髪は続けたほうがいいでしょう。

 余談ですが、人間は「フェロモン」と呼ばれる生活物質を放出しています。
 ファーブルの「昆虫記」にも記述があるように、雄が雌を引き寄せるための生活活性物質でもあり、人間の場合も異性を引き付ける分泌物として知られています。

 せっかく、異性にアピールする物質が出ているのに、毎日、洗髪したら、それも洗い流してしまいます。男女間の間では、不利に働いてしまうかもしれません。もっとも、シャンプーやコンディショナーの香りがフェロモン同様の働きをする場合も多いかもしれませんが。

美しい髪を持った女性の秘密は……

 私のクリニックには、とてもしなやかでツヤがあり、びっくりするぐらい美しい髪をお持ちの女性がいらっしゃることがあります。どうやってケアをしているのかをお聞きすると、みなさんが「時々、お湯で優しくすすぐだけ」と口をそろえるのです。

 やっぱり、時々!なんです。これがミソなのかもしれませんね。
 長い間の習慣で、人間が本来持ってる自浄作用を取り戻しているのでしょう。かゆくなってかきこすってしまう前に、お湯で優しくすすぐ――。これが理想的な髪の毛のケアなのですね。

 とは言っても、洗髪料やコンディショニングなしではとても耐えられないと思う方がほとんどです。だから、「時々、お湯で優しくすすぐだけにしましょう」とは申しません。
 せめて、「毛穴や毛根に洗髪料が残らないように、よくすすいでください」とご案内するようにしています。

擦る刺激

 さて、まぶたを擦ると、眠気が軽快してシャキッとする感じがします。これは、「交感神経が緊張して、戦闘モードに入るから」とされています。学生時代、夜遅くまで勉強しているときに、まぶたをこすって、気合を入れなおした記憶がある方は多いと思います。
 とはいえ、頭をかく――、つまり頭皮をこすって、かゆみを落ち着かせたり、気合を入れたりすることは好ましくありません。

 長野県の30代の患者さんが、クリニックに相談に来ました。頭皮に赤みがあり、かゆく、フケも多くて困っているとのことでした。

 詳細を尋ねると、洗髪時だけでなく、普段もよく頭をかく習慣があるとのことでした。診察中も、緊張をまぎれさせるためか、何度も頭をこすっています。頭皮の状態を見たら、表層には傷が多くみられ、炎症も起きていました。頭をかく習慣のせいで、傷ついてしまい、ちょっとした刺激でもかゆくなるために、またかいてしまうという悪循環に陥っていたようです。

 そこで、洗髪の際、皮脂を取り除き過ぎず、乾燥もし過ぎないように、シャンプーを減らすこと。それに、強くこすらずに、お湯で優しくすすぐことをアドバイスしたところ、ほどなく症状は落ち着きました。

 洗髪の際には、頭皮を強くこすらず、指の腹で優しくなでるように洗うのが好ましいとされています。こすると皮膚の表面の角質層が傷つき、その微細な傷に刺激が加わると炎症やかゆみが生じて、さらにまたこすってしまうことにつながります。この刺激は、温度差、ほこり、花粉、シャンプー、整髪料などさまざまなものが考えられます。
 こすることで悪化する現象は、アトピー性皮膚炎と同じですね。

ひっぱる刺激

 日頃のケアでもうひとつ大切なのは、髪を過度に引っ張り過ぎないことです。

 長野県在住の50歳代の女性は、幼い頃からポニーテールでしっかりと後方に髪の毛をひっつめることが多かったとのことです。その結果、前髪の生え際のラインが、びっくりするぐらい後方に移動していました。しかも、本来、前方の頭皮がとても薄く、毛穴が 萎縮いしゅく) してしまって、毛根が簡単には見つけられないほどでした。

 日常的に後方に引っ張られることで、頭皮の血流が低下した結果、頭皮が薄くなって、毛根が長期間休眠期に入ってしまったようです。

 同様の症例は何度か見たことがあり、日本人だけではなく、東欧出身の女性患者さんにもありました。

 ポニーテールは、女性らしさと同時に活動的な印象も与える、とてもすてきな髪形ではありますが、頭皮にとって、あまりに強く引っ張る刺激は、お勧めできないことがご理解いただけると思います。

養毛育毛治療中の洗髪

 患者さんからは、養毛育毛の外用薬を使っているとき、1日に何回洗髪するのがよいかとの質問をよく受けます。

 養毛育毛の治療中は、朝晩に外用薬を塗布することが好ましいので、結果的に1日に1~2回洗髪することなってしまいます。でも、私たちの先祖のように、本来の自浄作用を取り戻せば、本来は頻繁に洗髪する必要はないはずなのです。

 私のクリニックでは、治療の結果、髪の毛が十分に復活したところで、いったん外用剤は卒業して、洗髪の頻度も下げていただくようにご案内しています。(田中洋平 形成外科医)

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tanaka-youhei_prof

田中 洋平(たなか・ようへい)

 クリニカタナカ 形成外科・アンティエイジングセンター(長野・松本市)院長 新潟薬科大学客員教授、東京女子医科大学非常勤講師。1975年生まれ。

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2件 のコメント

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娘の白髪

piichan

中学2年娘の白髪に悩んでいます。 娘の頭に白髪を見つけたのは、小学校2年生の時でした。いつものように朝髪を結わいていると、1~2本…。その時は「...

中学2年娘の白髪に悩んでいます。

娘の頭に白髪を見つけたのは、小学校2年生の時でした。いつものように朝髪を結わいていると、1~2本…。その時は「若白髪はお金持ちになれるよ」などと言って、あまり気に留めませんでした。

中学に入り自分で髪を結わくようになり、あまり娘の頭を見ることもなくなっていきました。
それが…
つい先日、「頭がかゆいんだけど、フケある?」と聞かれ、頭を見てみると、見えなかったところに白髪がチラホラ…。
41歳の私より、確実にたくさん、白髪が生えていたのです。
ショックでした。

娘は強度の近視で、コンタクトレンズを着用しています。目を使い過ぎると白髪が増えるといいますが、関係あるでしょうか。
また、性格が少し敏感なところがあるので、ストレスなのかな?とも思います。
これからもっと増えて、それがまたコンプレックスに繋がったらどうしよう…と、心配でたまりません。
ちなみに、シャンプーはフケかゆみ用のものを2年ほど使用しています。

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フケ症

piraniya

私は若い頃からフケ症でした、今もフケ取りシャンプー.リンス. 白髪染めトリートメント、使用しています、1週間に2回です、 今でもフケかゆみが治り...

私は若い頃からフケ症でした、今もフケ取りシャンプー.リンス.
白髪染めトリートメント、使用しています、1週間に2回です、
今でもフケかゆみが治りません.見習って実行してみます。😆

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